#033 実況! お弁当戦線

ちいさな物語

午前の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ると、俺はすかさずカバンの中の弁当箱を取り出した。

「さあ、ついにランチタイムのゴングが鳴りました!」

心の中で歓喜の声をあげる。俺はひとり興奮しながら机の上に弁当を広げた。今日は母が作ってくれた手作り弁当。選手たちは揃っている。白米、唐揚げ、卵焼き、ポテトサラダ。そして――謎の小袋。

「まずは第一走者、卵焼き! さっそく箸を入れると、ふんわりとした感触が指先に伝わる! 口に運べば、ほんのり甘さが広がる! うまい! これは見事な立ち上がりです!」

自分の脳内実況に乗せられながら、俺は次々と弁当を味わっていく。唐揚げは衣がサクサクで、肉汁があふれる絶品。ポテトサラダは絶妙な酸味が効いている。

だが——ここで試合は急展開を迎えた。

「きたぞ! この弁当最大の謎、小袋の登場だ!!」

袋には何の表記もない。中に何が入っているのか、まるでわからない。

「果たしてこれは醤油なのか、マヨネーズなのか、それとも想像を超える未知のソースなのか!?」

慎重に封を切り、箸の先で少しすくって舐める。

「……おおっと!? これは……ソース! いや、違うぞ! たこ焼きソースだ!」

まさかの伏兵登場に、俺の脳内観客席は騒然とする。

「このたこ焼きソース、いったい何に合わせるべきか!? 唐揚げか? ポテトサラダか? それとも白米に直接か!?」

俺は決断を下した。

「ここは大胆に、唐揚げにかける!!!」

たこ焼きソースをまとった唐揚げを口に運ぶ。

「……うまい!!!」

甘辛いソースが唐揚げのジューシーさを引き立て、想像以上の相性を見せる。これはまさに奇跡のマリアージュ!

「さあ、ラストスパート! 最後の一口を食べ終えて……完食!!!」

俺は満足感に包まれながら、そっと弁当箱のフタを閉じた。

「いやぁ、白熱の展開でした。まさか、こんなドラマが待っているとは……!」

こうして、俺のランチバトルは幕を閉じた。次はどんな挑戦が待っているのか——また明日を楽しみにしよう。

〜友情の競演編〜

「よっしゃ、飯にするか!」

今日は白米、唐揚げ、ウインナー、トマトサラダ、きゅうりの漬物。そして――また謎の小袋

昼休み、俺はいつものように机に弁当を広げた。すると机を俺の向かい側に素早く移動させたタカシも同じく弁当を取り出す。そして二人目配せをした。

「さあ、本日も開幕しました! ランチタイム実況! しかし今日はちょっといつもと違う。俺の向かいには、同じく弁当を広げる親友・タカシの姿が! これはまさかのダブル実況」

「昨日は購買のパンだったけど、今日は母ちゃんが作ってくれた」と、不適な笑みで腕まくりをする。

タカシの弁当は、見るからにボリューミーだった。ハンバーグ、エビフライ、ウインナー、卵焼き、きんぴらごぼう、そして白米の上にドカンと乗った梅干し。

「こいつはすごいラインナップだな……!」

俺は心の中の実況席を温めつつ、弁当バトルのゴングを鳴らした。

「さあ、試合開始! まずは俺、安定の唐揚げから入ります!」

カリッと揚がった衣の食感と、ジューシーな肉汁が口の中に広がる。

「これは絶好調の滑り出し! タカシ、リードを許したか!」

「なめるなよ。俺のハンバーグを見せてやる!」

タカシがフォークでハンバーグを割ると、中から溢れる肉汁。

「うおおっ、これは……デミグラスソースが絶妙な仕上がり! しっとりとした肉の旨みが、まさに絶品!!」

負けじと俺もきゅうりの漬物を口に運ぶ。

「ここでサイドメニューの援護射撃! 軽快な歯応えが戦況を大きく左右する!」

「ふっ、まだまだだぜ。エビフライ、行きます!」

タカシが誇らしげにタルタルソースをたっぷりつけてエビフライを頬張る。

「これは強烈な一撃! ぷりっぷりのエビが見事なアクセントを生み出している!」

そして、戦いはクライマックスを迎える。

「さあ、終盤戦! 俺の弁当には謎の小袋がある!」

「おっと、俺のにもあるぞ!? これはまさかのWミステリーパック!!」

互いに小袋を開封する。

「俺は……ケチャップ!」

「こっちは……マスタード!」

「さあ、どうする!? ここでまさかのソース交換か!?」

「いや、ここはそれぞれの道を行く!」

俺は唐揚げにケチャップを、タカシはエビフライにマスタードをかける。お互いの意外な取り合わせに一瞬の緊張が走った。

「……うまい!!!」

「……最高だ!!!」

すさまじい拍手が巻き起こる。スタンディングオベーション!(脳内)

このままクライマックスへなだれ込むか。

「待て!」

早くも実況の締めに入ろうとした俺をタカシが制する。

「合体だ!」

タカシは俺のケチャップと自分のマスタードの小袋を手にして重ね合わせると、自分と俺のウインナーにぶりぶりと中身をひねり出した。

「おおーっと、ここで場外乱闘の大技が炸裂! ホットドッグに着想を得たか。Wミステリーパックによる共演。すごい、すごいぞ!」

そして俺たちはウインナーを同時に頬張った。

『うまぁぁあーい!!』

戦いは幕を閉じた。

「今日もいい勝負だったな」

「おう、また戦おうぜ」

こうして、俺たちは友情のランチバトルを締めくくった。明日はどんな展開が待っているのか——今から楽しみだ。

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