変な話

ちいさな物語

#596 退屈な休暇の終わらせ方

ねえ、ちょっと聞いてくれますか?これ、誰かに話したくてたまらなかったんですよ。信じられないかもしれないけれど、つい先週、本当にあった話なんです。舞台は、あの悪名高い「少女連続失踪事件」を解決した直後のこと。僕の相棒であるあの探偵――名前は伏...
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#594 守護の手つきが荒すぎる

霊が見えるという知り合いの真田、ある日いきなり顔をしかめられた。「うわぁ」第一声がそれは失礼だろうと思ったが、真田は俺の肩のあたりを見たまま、動画視聴中に超絶長い広告が入ったような顔をして見ている。「ずいぶんと強い守護霊が……ついてますね」...
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#593 間違い電話

Aという男は、顔はふつう、成績もふつう、運動もそこそこ――なのにとある事象だけが異常だった。それは、モテるとか、営業がうまいとか、そういうポジティブな異常ではない。間違い電話が、意味わからん頻度でかかってくるのである。今どき? 今どき間違い...
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#590 新しい正装

かつて、ネクタイを締め、窮屈なジャケットに身を包んで通勤していた時代があった。今となっては、それは歴史の教科書に載る「非効率な時代の奇習」として片付けられている。在宅勤務が完全に定着した現在、社会の価値観は一変した。「移動時間は無駄」「化粧...
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#589 町内会の幽霊

その廃屋は、町の北端で静かに朽ち果てていた。かつては「出る」と噂され、夏休みともなれば肝試しに訪れる子供たちの絶叫が響いたものだが、それも今は昔の話だ。最近の子供たちはスマートフォンの画面に夢中で、埃っぽい古い家屋を探索するよりも、仮想空間...
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#588 サービスタイム

うちの近所のスーパーは、夕方六時を過ぎると空気が変わる。惣菜コーナー周辺を中心に客の様子が不自然になるのだ。誰もが興味なさそうな顔をしながら、何度も同じ場所をうろうろし始める。全員、似たような軌道を描きながら、回遊魚のごとく店内を回り始める...
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#582 もちょん

今日も残業を終え、疲れ切った体を引きずってアパートの自室に戻った。ドアを開け、明かりをつける。玄関から一歩入り、ふと部屋の隅にある木製の棚に目を向けたとき、違和感を覚えた。棚の上に、見覚えのないものがある。近づいて確認してみると、それはカピ...
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#581 黄金の圧迫面接

いや、マジで今の時代、人間がペットを選べるなんて思ってる奴は化石ですよ。情報弱者もいいところだ、って言いたくなりますね。動物愛護の法律が一段と厳しくなり、ブリーダーには国家資格が必要になりました。そのうえ、難易度の高いブリーダー試験に合格し...
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#580 持ち帰り

私は、ごく普通のサラリーマンだ。特別な才能があるわけでも、霊感があるわけでもない。少なくとも、先月のあの日まではそう信じていた。私の「とある変化」に、何かのきっかけがあったのかどうか、それすらよくわからない。あの日、仕事の都合で、私は地方の...
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#578 大「代行」時代

いやもう、マジで現代社会の効率化ってのはどこまで行っちゃうんですかね?皆さんもご存知でしょう、数年前に流行った退職代行。そのとき僕はまだ笑っていました。いやまあ、気まずいもんな、とは思ったわけです。上司に「辞めます」と言うの、胃がきゅっとし...