ちいさな物語

#000 ちいさな物語屋

「話って? どういう話でもいいのか?」さびれた観光地である。ほとんど誰も入らないような山道は電話で職員を呼ばないと開けてもらえない。廃墟などのさびれた感じがいいとそこへ向かう人は少なからずいるらしい。だからたまたまそこに鉢合わせた人がいても...
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#611 パチンコ店の怪

今から十年ほど前の話だ。俺は郊外のパチンコ店でバイトをしていたんだ。あんた、知ってるかな。国道の脇の「ゴールデンラッキー」って店だ。まだあるかわからないけどな。当時はまだ現在とは違い、玉が筐体から外に出る仕様だった。だからパチンコ屋のバイト...
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#610 黄金の鱗の竜

なあ、お前、あの山がどうして呪いの山になったのか知っているかい?今はただの荒れ果てた山だが、昔はあそこに見事な黄金の鱗を持つ竜が住んでいたんだよ。山もとても豊かでね。その頃はこの村もとても豊かな村だった。秋はたくさんの実りがあり、井戸の水も...
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609 三人称の侵略

鈴木が目を覚ますと、見慣れたはずの天井の染みがいつもより奇妙に黒く歪んで見えた。「彼は重い体をゆっくりと起こし、昨日からの疲労を引きずりながら深いため息をついた」誰もいないはずの部屋の中に、落ち着いた低い男性の声が突然響き渡った。鈴木は驚い...
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#608 古道具屋の記憶

陽翔はるとは、自分の手が嫌いだった。物に触れるたび、その物のどうでもいい記憶ばかりが一方的に流れ込んでくるからだ。消しゴムを拾えば、昨日だれの机から転がり落ちたのか見えてくる。駅の手すりを握れば、この手すりに触れたであろう何人もの手のひらが...
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#607 幼馴染が俺を好きらしいがそんなわけがない

「好き」高校二年の秋。放課後の教室で、幼馴染の七瀬が突然そう言った。反射的に後ろを見た。誰もいない。いや待て。こういう時って大抵、どこかに友だちが隠れているんだよ。スマホで撮影していて、俺が調子に乗った途端に「うぇーい!」って出てくるてはず...
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#606 部屋にいる人

四歳の息子、陽太が保育園から一枚の画用紙を持ち帰ってきた。白い紙の真ん中には、クレヨンで描かれた二人の人物が手をつないで笑っている。「上手だね、陽太。これ、ママと陽太?」私が尋ねると、陽太は誇らしげに頷いて「うん!」と元気よく答えた。離婚し...
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#605 勤務先の異世界支社に飛ばされたけど質問ある?

あ、どうも。聞こえてます? こっちからだと通信、不安定なんですよね、基本。ええ、そうです。まさに僕が、例のスレを立てた本人ですよ。「勤務先の異世界支店に飛ばされたけど質問ある?」ってやつ。まさかあんなに伸びるとは思いませんでしたけど、まあ、...
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#604 追いかけてくる未読通知

ねえ、ちょっとおかしなアプリを見つけた話を聞いてくれる?議事録をまとめたり、自動でTo doリストを作成したり、タスクを優先順位で並べ替えたり……そんな仕事効率化系のアプリを探すのが私の趣味だったんだ。仕事を効率化したいのか、アプリを使って...
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#603 扉職人の理

なあ、あんた。そこにある古びた木の扉を見てくれよ。ただの板切れに見えるかもしれないが、こいつが完成したときには、ここから一歩踏み出すだけで遥か遠くの異国へ行けるようになるんだ。俺はこれを作る扉職人の弟子だ。師匠は、この道では知らない者がいな...