怖い話

ちいさな物語

#598  執着の教本

「皆さん、こんにちは! 防犯系ストーカー配信者のメグです!」カメラに向かって満面の笑みを浮かべる彼女の背後には、相棒のカイトが立っていた。「カイトです。今回もまたメグのひどいストーカー行為の被害に遭っています」どっと大勢の人が笑う声の効果音...
ちいさな物語

#587 誘人木

去年の秋のことだ。引っ越してきたばかりの一軒家の庭に、見慣れない木が一本立っていた。不動産屋に聞いても「前の住人が植えたんでしょう」と言っただけだった。樹高は2メートルほど。幹は妙にねじれていて、葉は濃い緑なのに光の当たり具合によっては青み...
ちいさな物語

#586 5秒先の未来

駅前の騒がしい居酒屋で、3杯目のハイボールが空いた頃だった。いつも穏やかで、社内でも「仏の斎藤」と慕われる先輩が、グラスの縁をなぞりながら妙なことを言い出した。「実はさ、俺、5秒先が見えるんだよね」酔っ払いの世迷い言だと思った。私は適当に相...
ちいさな物語

#534 折り鶴の悪魔

あの時の話をすると、決まってみんな笑うんだ。「ストレスで頭がおかしくなったんじゃない?」なんてね。でも嘘でも冗談でもない。本当に起きたことなんだ。聞いてほしい。あれは、まだ寒さの残る春先の午後だった。その日、会社で腹の立つことがあった。いや...
ちいさな物語

#530 機械の虫

最初に見つけたのは、庭の鉢植えの脇でした。カナブンくらいの大きさの虫がひっくり返っていて、足をばたつかせていたんです。よくある光景だと思うでしょう?でも、近づいた瞬間、違和感に気づきました。足のつけ根に、小さなネジが見えたんですよ。ネジなん...
ちいさな物語

#529 縁切り鋏

骨董屋で縁切り鋏というものを手に入れた。見た目はただの古びた鋏で、刃は少し欠けていた。骨董店の主人の話によると――「その鋏で縁を切りたい人の名前を書いた紙を切るとね、その人の記憶から君が消える。便利だろ?」「便利」という表現が何か違うような...
ちいさな物語

#525 回転ドアが終わらない

駅ビルの入口にある回転ドアは、ごく普通のガラス製だった。そのときも、いつもと変わらないように見えた。それなのに――用事を済ませた私がドアへ足を踏み入れた瞬間、空気がひやりと反転したような感覚が走った。外は寒いのかもしれないと思いながら、半周...
ちいさな物語

#522 永遠にかくれんぼ

夏の夕暮れ、校庭の裏で始まった、ただのかくれんぼがすべての始まりだった。私が十歳のとき、同級生の子供たちと遊んでいた。鬼になったハルは目をつぶって十秒数えはじめ、私たちは散り散りに逃げた。その日、私は用具倉庫の裏に身を潜めていた。鬼が動き出...
ちいさな物語

#513 深夜二時の動画

夜中の二時、眠れなくて動画サイトをだらだら眺めていたんだ。その時、妙に古びたサムネイルが目に入った。「絶対に見てはいけない映像」こういう大袈裟なのは大抵釣りだろうって、軽い気持ちで再生したんだよ。映像は暗く、ノイズだらけだった。廃屋みたいな...
ちいさな物語

#510 階段に海苔巻き

最初に違和感を覚えたのは、駅の階段の踊り場だった。朝のラッシュ、足元を見たとき、そこに海苔巻きが落ちていた。一本まるまる、きれいにラップで包まれている。誰かが昼食用に持ってきたものを落としたんだろうと思った。しかし、踏まれも汚れもしていない...