ある日、俺のスマホに一通のアンケート結果が届いた。
「全国100万人が答えた生活実態調査」
なんとなく興味が湧き、結果を眺めてみる。すると、開いた瞬間、思わず「は?」と声を漏らした。
——「朝食にワニの肉を食べる人、78%」
嘘だろ? そんなものスーパーで売ってるのを見たことがない。
——「週に3回は三角跳びで移動する、62%」
どういうことだ? そもそも三角跳びってなんだったっけ?
——「月に1回は脳を洗浄する、85%」
脳を? どうやって?
もう意味がわからない。
こんなのデタラメだ。明らかにおかしい。
俺はすぐにSNSを開き調査結果のメールの件を書き出した。そして「このアンケート結果、絶対に間違ってる!」と付けて投稿する。だが、数分もしないうちに返信がつく。
「え? 何が変なの?」
「どこがひっかかってるのか詳細たのむ」
「めっちゃ普通じゃない?」
何が? ワニの肉? 三角跳び? 脳の洗浄?
冗談だろ? 俺はパニックになり、友人に電話をかけた。
「なあ、ワニの肉って本当にみんな食ってるのか?」
「うん、普通に美味しいじゃん?」
「三角跳びって、なんだよ?」
「移動の基本だろ? 何言ってんの?」
「脳の洗浄は?」
「それしないと、思考が詰まるだろ。お前、本当にやってないのか? 汚ねぇなあ」
電話越しの声が急に低くなる。
「お前……本当に大丈夫か?」
俺は言葉に詰まった。
これは何かの冗談だ。俺が騙されてるんだ。
そう思いたかったが、テレビをつけても、新聞を読んでも、すべてのメディアが当たり前のように「ワニの肉のおすすめレシピ」や「三角跳びのコツ」を特集している。
これはおかしい。おかしいのは俺じゃない。世界のほうだ。
そう思った瞬間、スマホに新しい通知が届いた。
「あなたのアンケート回答と社会の乖離が確認されました。調整を開始します」
調整? なんの?
その瞬間、頭がズキンと痛んだ。意識が遠のく。
——翌朝、目を覚ました俺は、ワニの肉を焼きながら、軽く三角跳びで冷蔵庫へ向かった。
そうだ。これが普通だ。何もおかしくない。
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