深夜、人気のない神社の境内。今年こそ、彼女ができますように。鳥居をくぐると、目の前にキラッキラのスーツを着た男がいた。
「やっほ~☆ 君、悩みとかあんの?」
「……は?」
金髪オールバックにサングラス。胸元をはだけさせ、金のネックレスがジャラジャラ揺れている。まるで場末のホストか、バブル時代からタイムスリップしてきた男だ。
「俺、神様! なんでも叶えちゃう系のヤツ! てか、君、ツイてないっしょ?」
「いや、お前がツイてなさそうだろ」
どう見てもちょっと時代に乗り遅れている。幸運そうには見えない。
「うぉーい、神様にお前呼びはナシ! ま、いいけど☆ で、願い事ある?」
こんな胡散臭いやつ、無視して帰ろう。今日は運が悪かった。そう思って背を向けると、突然、彼の指が光った。
「とりま運試ししてみ?」
気づけば、俺の手の中には黄金のサイコロ。ついつい言われるがまま転がしてみると――「6」。
「おめでとう! 大吉! すげーラッキー!」
「え、どのへんが?」
「じゃ、とりま彼女できるおまじない、かけとくわ! ぴゃぴゃっと!」
指をパチンと鳴らした瞬間、スマホに通知が来た。知らない番号からのLINE。
《洋くんだよね? LINEつながってなかったっぽいから》
俺は洋じゃない。明らかに間違って送られてきたものだ。
「……誰?」
「さっき、ちょちょっと未来いじっといた☆ その子、いい感じの子。明日中に出会えるよん♪」
「いや、勝手に人の未来をいじるなよ!!」
そもそも間違いのLINEが来て、明日中に会うってどういう状況よ。
「んじゃ、お礼にお賽銭はずんでね☆」
「金取るんかい!!」
「神様って意外とビジネスなんよ~」
そう言って、彼はサングラスを外し、ニカッと笑った。
うわ、腹立つレベルのイケメン。
瞬間、彼の周りの空気が変わる。月の光が集まり、まるで本物の神様みたいな雰囲気に――
「って、マジっぽく見えた? いや~俺って演出うまくね? とりま君がSNSとかで『あそこの神社サイコー』とか拡散してくれれば、こっちはお賽銭がっぽがぽって算段」
なんて神様だ。
「ふざけんな!!」
叫ぶ俺をよそに、彼はひらりと夜空へ舞い上がった。
「またね~☆ てか、マジで彼女できたら報告よろ~」
翌日、本当に出会った「運命の人」がめちゃくちゃギャルだったのは言うまでもない。――が、それが今の嫁ってオチ。
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