#101 チャラ神様のご加護

ちいさな物語

深夜、人気のない神社の境内。今年こそ、彼女ができますように。鳥居をくぐると、目の前にキラッキラのスーツを着た男がいた。

「やっほ~☆ 君、悩みとかあんの?」

「……は?」

金髪オールバックにサングラス。胸元をはだけさせ、金のネックレスがジャラジャラ揺れている。まるで場末のホストか、バブル時代からタイムスリップしてきた男だ。

「俺、神様! なんでも叶えちゃう系のヤツ! てか、君、ツイてないっしょ?」

「いや、お前がツイてなさそうだろ」

どう見てもちょっと時代に乗り遅れている。幸運そうには見えない。

「うぉーい、神様にお前呼びはナシ! ま、いいけど☆ で、願い事ある?」

こんな胡散臭いやつ、無視して帰ろう。今日は運が悪かった。そう思って背を向けると、突然、彼の指が光った。

「とりま運試ししてみ?」

気づけば、俺の手の中には黄金のサイコロ。ついつい言われるがまま転がしてみると――「6」。

「おめでとう! 大吉! すげーラッキー!」

「え、どのへんが?」

「じゃ、とりま彼女できるおまじない、かけとくわ! ぴゃぴゃっと!」

指をパチンと鳴らした瞬間、スマホに通知が来た。知らない番号からのLINE。

《洋くんだよね? LINEつながってなかったっぽいから》

俺は洋じゃない。明らかに間違って送られてきたものだ。

「……誰?」

「さっき、ちょちょっと未来いじっといた☆ その子、いい感じの子。明日中に出会えるよん♪」

「いや、勝手に人の未来をいじるなよ!!」

そもそも間違いのLINEが来て、明日中に会うってどういう状況よ。

「んじゃ、お礼にお賽銭はずんでね☆」

「金取るんかい!!」

「神様って意外とビジネスなんよ~」

そう言って、彼はサングラスを外し、ニカッと笑った。

うわ、腹立つレベルのイケメン。

瞬間、彼の周りの空気が変わる。月の光が集まり、まるで本物の神様みたいな雰囲気に――

「って、マジっぽく見えた? いや~俺って演出うまくね? とりま君がSNSとかで『あそこの神社サイコー』とか拡散してくれれば、こっちはお賽銭がっぽがぽって算段」

なんて神様だ。

「ふざけんな!!」

叫ぶ俺をよそに、彼はひらりと夜空へ舞い上がった。

「またね~☆ てか、マジで彼女できたら報告よろ~」

翌日、本当に出会った「運命の人」がめちゃくちゃギャルだったのは言うまでもない。――が、それが今の嫁ってオチ。

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