これは、数年前の話なんだけどね――そう、あの頃はちょうどドローン作りにハマっててさ。
よくある市販のドローンなんて面白くないから、自分でリアルな鳥そっくりの「リモコンバード」を作ったんだよ。羽ばたきも完全再現。知らない人が見たら、絶対本物と区別つかないって自信があったな。
そのリモコンバードを飛ばすのが、楽しくて仕方なかった。
公園のベンチでのんびりしてる人に近づけたり、通行人を驚かせたり、まぁ、ちょっとしたいたずらを楽しんでたわけ。
だけど、ある日、あれは夕暮れ時だったかな。いつものように近所の空を飛ばしていると、少し先の路地裏で、妙な動きをする車が見えたんだ。
気になってそっと鳥を近づけてみると、二人の男が車から重そうな荷物を降ろしていた。薄暗くて最初はよくわからなかったけど、映像をアップにしてよく見ると……なんと、それ、人が縛られていたんだ。
心臓が跳ね上がったよ。
慌ててカメラの録画ボタンを押して証拠を撮ったんだけど、男のひとりがこっちに気づいたんだ。
「あの鳥……なんで逃げないんだ。ちょっと変じゃねえか?」
そう言って、男が私のドローンに向かって銃みたいなものを向けた。
慌ててリモコンバードを急上昇させて逃げようとしたけど、サプレッサー付きの銃声らしき音がして、映像が激しく揺れた。おそらく少しかすった程度だろう。かろうじて家まで戻れたものの、羽はボロボロで修理は大変そうだ。
もう、生きた心地がしなかったよ。
あの映像を警察に持ち込むべきか悩んだけど、証拠になるかも疑わしいし、何より自分が巻き込まれることが怖かったんだ。
でも、そのまま放っておくわけにもいかないだろう? だから匿名でUSBメモリに映像を入れて、警察署のポストにこっそり入れてきた。その夜は、一睡もできなかったよ。
翌朝ニュースを見ると、近所で誘拐された人が無事に救出されたって報道があった。
一瞬ほっとしたけど、私のドローンについても言及されていて、「なんらかの飛行物体から撮られた映像が事件解決のきっかけになった」と報じられてしまった。
当然、ネットではちょっとした騒ぎだ。
「ドローンだろう」とか「未知のスパイ機か?」とか、騒ぎは大きくなっていく。
すると数日後、家のインターホンが鳴った。覗き穴を見たら、黒いスーツの男が二人立ってるんだよ。
私は息をひそめ、心臓が張り裂けそうになりながら、居留守を使った。するとドアの隙間から一枚の名刺が差し込まれてさ。
後でそっと拾って確認したら、ある政府関係機関の名前が書かれていたんだ。あの誘拐事件、もしかして政府が関係していた?
確かにニュースで流された動画は犯人の顔がわからないように加工されていた。あたかも画角の関係で写らなかったかのようにされていたのだ。自分の元動画にはしっかりと犯人の顔が写っている。もしかして、そのせいで……?
あれ以来、ドローンを作ってないよ。それどころか、家にも帰っていない。だって、黒いスーツの男たちが、必ず居所を突き止めて、やってくるんだもの。
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