#013 心霊スポットでの心得

ちいさな物語

高校の頃、不良仲間と「やばい場所」を巡るのが流行ってたんだ。俺たちは度胸試しがてら、地元で有名な廃病院に行くことにした。夜中の2時、懐中電灯を片手に病院の門をよじ登って侵入した。

中はカビ臭くて、壁には落書きだらけだった。どの落書きもよくあるやつだよ。「呪」とか「××は不倫してる」とか「◯◯死ね」とか。くだらねぇ。

そんなに大きな病院じゃないから一階から三階まではすぐに見終わっちまった。ベッドとか棚みたいなもんとかわりとそのまま残ってて見ごたえあったぜ。

そんで最上階に向かう途中、仲間の一人が突然立ち止まった。「聞こえたか?」って言うんだ。耳を澄ませると、かすかに笑い声が聞こえる。それも小さな女の子の声だ。

「マジかよ」なんて言いながら、そのときはまだはしゃぎながらその声のした方へ向かった。声が導いた先は病院の手術室だ。扉を開けると、もちろん誰もいない。ただ錆びた手術台の上に古い人形が転がってたんだ。ボロボロで目が片方しかない。手足も取れかけてる。手術台なんかに置いてあるから、手術に大失敗したみたいに見えたよ。

気味が悪くて俺たち黙り込んだんだ。そしたらさ、いるだろ? ここでなんかしたら株があがるって考えるやつ。仲間の一人が「何、ひびってんだ。ただの人形だろ?」って、その人形の髪の毛をつかんで、ラグビーボールみたいに蹴っ飛ばしたんだ。人形は壁に当たって取れかけていた右手がぼろっと落ちた。

まぁ、正直なところ先にやられたと思ったな。俺もそれをやろうとしてたとこだったから。でもま、結果、命拾いしたことになるかもな。

その瞬間だ。廊下の向こうから女の声が響いた。何を言っているのかはわからない。怒ってるみたいだった。その後はもう、覚えてないくらい慌てて病院を飛び出したんだ。

その直後はすごかったとか何とか喋りながら朝までみんなで騒いでたよ。今思えば本能的にひとりになるのはまずいかもしれないって全員思ってたんじゃねぇかな。

問題はその後だった。あの日以来、俺たち4人は次々と変な目に遭った。夜中に女の声で名前を呼ばれたり、鏡に見知らぬ影が映ったり。でもまぁ、これくらいなら「気のせいだろ?」ですんだんだがな。

あの人形を蹴った奴が事故に遭った。車にはねられたんだが――二週間くらい苦しんで死んだよ。あの人形と同じで片目と右腕をやっちまってた。あの病院行ってから三日後くらいの話だぜ? 偶然にしちゃできすぎだろ。

一応見舞にも行ったんだけどな、あいつ「人形が来る」とか「ごめんなさい」とかうわごと言っててさ、気持ちわりぃだろ?

だから言うんだ。心霊スポットはやめとけ。いや、別にびびってねぇよ。もしどうしても行きたいなら、何も持ち帰るな、何も壊すな。じゃなきゃ遊びにしちゃリスクが高すぎるって話だ。おふざけもクレバーに行こうぜ。

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