ちいさな物語 #175 わかりやすいご利益のある神社 その神社は、いわゆる人ぞ知る存在だった。山の中腹、朽ちかけた鳥居をくぐり、急な石段を上った先に、ぽつんとある。観光案内所の地図にも載っていないし、グーグルマップでも「神社」としか出ない。神社マニアの僕だから存在に気づいたようなものだ。だが、... 2025.04.13 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #174 世界一わかりやすい靴下のはき方 「おぬし、靴下の正しいはき方を知っておるか?」町の片隅にある古びた喫茶店。コーヒーをすする私に、向かいの席の老人がそう問いかけた。「え? 靴下のはき方ですか?」「そうじゃ。ただ足を突っ込めばいいと思うておるじゃろう?」当たり前じゃないか。靴... 2025.04.13 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #173 後ろ向きの写真 祖母が亡くなった日、母と私は遺品整理で慌ただしくしていた。祖母の家は古くからある日本家屋で敷地はとても広い。一日では片付かないため数日間の泊まりがけだ。学校は春休みなので、田舎の空気を吸いに行くくらいの軽い気持ちで同道した。その日、私は一人... 2025.04.12 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #172 選択肢の多い料理店 薄暗い夜道で空腹を抱え歩いていると、真新しい料理店を見つけた。ネオンの看板には「セルフサービスレストラン」と書かれている。入り口は無人で、自動ドアをくぐると、中には無機質なタッチパネルが並んでいた。僕は空腹に急かされ、画面をタップした。『よ... 2025.04.12 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #171 空き缶の恩返し その日は特に変わったこともなく、俺は学校からの帰り道を歩いていた。ふと足元を見ると、道端に潰れた空き缶が転がっている。ジュースの缶だ。誰かが適当に捨てたのだろう。「まったく、マナーがなってないな……」俺は溜息をつきながら、その缶を拾い、近く... 2025.04.11 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #170 地下三階 放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる... 2025.04.11 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #169 世界がゲームになった日 いつも通りの朝だったはずだ。けれど窓を開けると、そこには異様な光景が広がっていた。通勤中のサラリーマン二人が突如、道端で格闘ゲームのキャラクターのように激しく殴り合い始めたのだ。「光弾拳!」ネクタイを締めた男性が叫ぶと、実際に手から光るエネ... 2025.04.10 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #168 勇魚の骨と海神の約束 むかしむかし、海辺の村にね、五助という漁師がいたんだと。五助は毎日、小舟に乗って漁をして暮らしておった。ある日、大きな嵐の翌朝に浜辺を歩いていると、見たこともないような大きな骨が砂浜に打ち上げられていたんだそうな。「これは何の骨じゃろう?」... 2025.04.10 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #167 世界中でただ一人 目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて... 2025.04.09 ちいさな物語不思議な話
SF #166 隕石から生まれたもの ある朝、庭に見知らぬ隕石が落ちていた。拳ほどの大きさのそれは、奇妙に脈動しており、気持ち悪いので触る気になれず放置していた。数日後、その気持ち悪い隕石が割れて何かが生まれてきた。それは透明でゼリー状のアメーバみたいなものだったが、僕がそれを... 2025.04.09 ちいさな物語SF