ちいさな物語 #013 心霊スポットでの心得 高校の頃、不良仲間と「やばい場所」を巡るのが流行ってたんだ。俺たちは度胸試しがてら、地元で有名な廃病院に行くことにした。夜中の2時、懐中電灯を片手に病院の門をよじ登って侵入した。中はカビ臭くて、壁には落書きだらけだった。どの落書きもよくある... 2025.01.22 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #012 パワハラ課長とカブトムシ 最近、うちの課の空気は最悪だ。パワハラが絶えない課長のせいで、社員のやる気は地に落ちている。変なセミナーで感化されて、全員変な体操をさせられたり、A4サイズのコピー用紙いっぱいになるまで社訓を繰り返し書かせたり、査定をチラつかせてやりたい放... 2025.01.22 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #011 三時間だけの同窓会 仕事帰りにふらりと酒場へ立ち寄った。小さな店だがそこそこにぎわっている。カウンターには数脚の古びたスツール、申し訳程度にテーブル席もあった。天井から吊るされたアンティーク調のランプはなかなか雰囲気があっていい。いきなり入ったことがない店に立... 2025.01.21 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #010 狐火そば 江戸時代、深川の外れに「狐火そば」というそば屋があった。その名は、店先に夜ごと灯る不思議な青白い光に由来する。店主の弥助といっては寡黙で愛想はなかったが、打つ蕎麦は江戸一だと皆「噂で」知っていた。なぜならそれを食べた者に直接聞いたわけではな... 2025.01.21 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #009 透明な涙を流す獣 仕事帰り道でのことだ。急いでいる時は森の横道を通る。いつもなんてことはない田舎道なのだが、その日は違った。静寂の中、不意に低く響く鳴き声が聞こえる。見渡すと木々の間に光るものがあった。恐る恐る近づくと、そこには見たこともない生き物がいた。体... 2025.01.20 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #008 無限こたつ 家族四人で囲むこたつ。テーブルの上には湯気の立つ土鍋と、ごく普通だけど魅力的な具材が並んでいる。僕はデザートにと出してきたみかんを片手に、鍋が煮えるのを待っていた。「このこたつ、居心地いいよね」と妹もみかんをもてあぞびながら言った。僕も同意... 2025.01.19 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #007 火星ステーションの事件 あれは確か、火星への2回目の赴任だったと思う。えーっと、地球の暦に換算すると……まあ、とにかく、あの時のことを話そう。火星ステーションに配属されてからというもの、日々の作業に追われていた。酸素濃度の管理、通信設備のメンテナンス、あとは食料の... 2025.01.18 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #006 あなたのもとへ あれはもう5年くらい前のことだ。最初にその手紙が届いたのは。ポストを開けたらちょっと古びた封筒が入っててさ。宛名が普通じゃなかったんだ。「いつかあなたのもとへ」ってだけ書いてある。差出人はなかった。中を開けると、薄い便箋に短い文章が書いてあ... 2025.01.17 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #005 最後の一杯 禁酒を決めたのは昨日のことだ。だが、今日の晩酌だけは例外にしてやろうと、最後の一杯を注いだ。最後を飾るのにふさわしい酒を昼に準備しておいたのだ。やはり禁酒にも儀式めいた何かが必要だろうと突然思いついたのだ。だが、この一杯で今度こそ終わり。明... 2025.01.16 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #004 密林研修 会社の研修で訪れたアマゾンの密林。研修担当者は笑顔で言った。「これから君たちには、自己成長のためのサバイバルを体験してもらう!」社員たちは軽いアウトドア体験だと思い込んでいた。だが、案内されたキャンプ地には食糧も水もなく、社用のノートパソコ... 2025.01.16 ちいさな物語変な話