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ちいさな物語

#429 後ろの行列

あれは、本当に妙な体験だったんですよ。会社帰りにいつもの道を歩いていたら、後ろから足音が聞こえたんです。最初は一人分の気配でした。まあ、夜道だし誰かが同じ方向に歩いているんだろうと気にしませんでした。でも、その足音がぴたりと僕の歩調に合って...
ちいさな物語

#428 じぃこと俺の日常

いや聞いてくれ、本当におかしくなったんだと思うんだ。俺は昔からアニメ好きだったんだけど、ここ数年は擬人化作品ばかり追いかけてたんだ。戦艦や競走馬が美少女になったり、武器がイケメンになったり、地名がキャラになったりするだろ? そういうのを追い...
ちいさな物語

#427 ぼくの遠足

【9月25日】今日は先生が遠足のことをはなしてくれた。来月のはじめに行くんだって。行き先はまだひみつだけど「ふつうの場所じゃないからお楽しみに」と言ってた。どんなところだろう。ワクワクして、友だちと帰り道にずっとその話をした。【9月27日】...
ちいさな物語

#426 笑いの迷宮

あれは、ほんの出来心だったんです。仕事帰りに見かけた細い路地にふと足を踏み入れました。その路地は他の道とは全然雰囲気が違ったんです。看板もなく、行き止まりのはずなのに、奥に暗いアーチのような入口が口を開けていたんです。まるで「入ってみろ」と...
ちいさな物語

#425 盤上に消える

古びた喫茶店の片隅に置かれた知らないボードゲーム。遊んだ仲間の一人が、次のターンが来る前に姿を消した。ゲームは続き、盤上の駒は消えた友人の席を指し示す。恐怖と好奇心の板挟みのまま、残された者たちはダイスを振る手を止められなかった。(文字数:...
ちいさな物語

#424 立会人

立会人という人を、あなたは聞いたことがあるだろうか。それは奇妙な仕事をする人だ。特別何かをするわけではない。ただ立ち会う。受験の合格発表を見に行くとき、初めて入る店の敷居をまたぐとき、夫婦喧嘩や遺産相続の話し合いにすら。彼はただそこにいて、...
ちいさな物語

#423 五つの宝と姉弟の旅

今でもあの旅を思い出すと、胸が熱くなるんです。まだ僕と姉が若かった頃の話です。「世界に散らばる五つの宝を集めれば、どんな願いも叶う」――そんな古い伝承を聞いたことがあるでしょう?僕らは、その宝を探す旅に出たんです。理由は単純でした。姉は幼い...
SF

#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...
ちいさな物語

#421 ウィジャボードの夜

大学二年の夏、僕は友人の洋平と美咲に誘われて、アパートの一室でウィジャボードをすることになった。夏休みだったのでちょっと怖い遊びをしてみたかったんだろう。ボードには文字や数字が並び、プランシェットを動かす遊びだということくらいは知っていたが...
ちいさな物語

#420 自販機に選ばれし者

その自販機は、商店街の外れにひっそりと置かれていた。パッと見は普通のドリンク自販機だ。ラインナップもコーラ、緑茶、スポーツドリンク、缶コーヒーと一見なんの変哲もない。しかし、その自販機には奇妙な噂があった。「客を選ぶ」らしいのだ。どういうこ...