イヤな話

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#537 幸福の抜け殻

隣の芝生は青い、という言葉がある。だが、私の家の隣にある芝生は、青いどころか発光しているんじゃないかと思うほどに眩しかった。数年前に越してきた工藤家のことだ。旦那さんは大手商社勤務で、毎朝爽やかな笑顔でジョギングを欠かさない。奥さんは料理上...
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#409 割り勘モンスター

聞いてくれよ。俺が前の会社にいた頃の話だ。飲み会がな、とにかく気が重くて仕方がなかった。理由はひとつ――経理課の鈴木先輩がいるからだ。あの人、酒も食い物も底なしでな。いわゆる食い尽くし系。乾杯するやいなや「ビール10杯! 串盛りも大盛りで!...
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#373 沈黙のランチ

昼休みのチャイムが鳴ると、私はパソコンを閉じる。ミユキがこちらに歩いてくるのが視界の端に見えた。予想通り、「ランチ行こ」の声。断ろうと思えば断れたのだろう。でもそれも面倒くさかった。ミユキは部署のムードメーカーだとみんな言う。人当たりがいい...
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#196 理想の職場

「ここが、『理想の職場』だよ」そう言われてドアを開けた瞬間、僕は思った。……臭う。いや、においではない、雰囲気が臭う。なんだこれは。「ようこそ新入り!」金髪リーゼントでガムをクチャクチャしながら近寄ってきたのは、田中課長だ。初対面で肩パンさ...
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#156 編みもやし

最初に「編みもやし」を見たのは、テレビの料理番組だった。「今、大流行の編みもやし! もやしを編んで料理すると、驚きの食感に!」そう言いながら、司会者が皿を掲げた。画面には、見たこともない奇妙な料理が映し出される。細いもやしが編み込まれ、綺麗...
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#155 鳥型ドローンのもたらしたもの

これは、数年前の話なんだけどね――そう、あの頃はちょうどドローン作りにハマっててさ。よくある市販のドローンなんて面白くないから、自分でリアルな鳥そっくりの「リモコンバード」を作ったんだよ。羽ばたきも完全再現。知らない人が見たら、絶対本物と区...
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#147 近すぎる叔母

「昨日、デート楽しかったんでしょ? あの人、いい感じ?」近所に住む叔母が不意に私に聞いてきた。驚きで喉が詰まった。確かに昨日、初めてのデートだったが、誰にも話していない。「どうしてそれを?」叔母はいたずらっぽく笑っている。「そんなのすぐわか...
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#117 やさしすぎるブラック企業

「世界で一番やさしいブラック企業、か……」ユウマはスマホの画面を見つめながら呟いた。求人サイトで偶然見つけたその会社の募集要項には、こう書かれていた。・未経験歓迎! 学歴不問! やさしく指導します!・24時間365日勤務可能な方歓迎!・休日...
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#105 捕食者の微笑み

私がその女を初めて意識したのは、部署内の歓送迎会の席だった。会社でも評判の美人で、常に誰かと笑顔を交わしている。いつも話題の中心にいて、人を気持ちよくさせる言葉選びが得意な彼女。にこやかな唇の端からこぼれ落ちる声は柔らかく、一度聞いたら忘れ...
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#088 並ばない女

コンビニのレジに並んでいたときだった。俺の前には三人、後ろにも二人。昼時だから多少待つのは仕方ない。そう思っていた矢先——横から女がスッと入り込んだ。彼女は一瞬の迷いもなく、まるでそこが自分の当然の場所であるかのように、俺の前に立った。「お...