異世界の話

ちいさな物語

#230 転生したらパーティにコンビニ店員がいた件

「転生です、おめでとうございます」白い空間で、ローブ姿の女神らしき人がそう告げた。よくある異世界転生モノだ。事故で命を落とした僕は、第二の人生を歩むらしい。「ではスキルを選んでください。剣? 魔法? 錬金術? 他に希望があれば、対応できるか...
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#219 世界を救った臭い靴

「靴を脱げ、勇者よ!」長老の真剣な声が響くと、僕は困惑した表情で自分の足元を見た。靴?「早く、その靴の臭いで世界を救うのじゃ!」「いや、待ってくださいよ。何を言ってるんですか?」そう言い返した僕の前に、黒い霧のような怪物が迫ってきた。目の前...
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#206 スキルチェック相談所

「あなたのスキル、無料で診断します――。」古びた木製看板に書かれた文字を眺めながら、僕はため息をついた。冒険者ギルドの試験を三回連続で落ちた帰り道だ。試験官の表情を思い出すと、胸が苦しくなる。戦士志望だが力は並以下。魔法も苦手。特別なスキル...
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#198 冒険者と一匹の猫

レオンは剣を抜きながら、ダンジョンの奥へと慎重に進んでいた。「この先に、財宝が眠っているはず……」古びた地図を頼りに、彼はこの未踏のダンジョンに挑んでいた。だが、進むほどに違和感が募る。罠は発動せず、魔物も一切姿を見せない。まるで、何かに導...
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#187 自分がドラゴンだと言い張る猫

うちの猫、タマが突然言葉を話し始めた。猫あるあるなんだけど、タマがじぃっと俺を見ている。こういうときは何か要求があるときだ。「タマちゃ〜ん、どうちたの? ちゅ〜る欲しいの?」猫バカな俺はタマの頭をなでながら、抱きあげた。健康のためにおやつの...
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#181 モンスター退治の経費計算

それは、黄金月の12日だったかのう。王都を騒がせていた大空の火竜・バルバルガを、ついに倒したってニュースが広まったんじゃ。倒したのは、五人組の冒険者パーティ「煌滅旅団ルミネグラ」——
剣士に魔法使い、僧侶に盗賊、あと何を間違ったのか、会計士...
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#161 ボロアパートの異世界魔導士

まさかさ、冗談だと思うだろ?「異世界から魔導士が来る」なんて。ファンタジー小説かよって。そういうのもだいたいこっちが転生とかして向こう行くもんじゃないの?でもさ、来たんだよ。しかも、俺のボロアパートに、だ。俺はというと、地味なサラリーマン。...
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#153 魔王城の案内人

僕は魔王の城への案内人だ。物心ついたときには、すでにそういう『設定』だった。僕は城の入り口で冒険者を待ち、魔王のもとへ案内する。「ここから先は危険ですよ。引き返すなら今のうちです」と、声をかけても、大抵は聞いてもらえない。命を賭して、ここま...
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#148 王女は今日も最前列

我が国のプリンセス、アンジェリカ姫には大きな秘密があった。そう、彼女は熱烈な「輝きの聖騎団」の追っかけ――いや、輝きの聖騎団の熱心な信徒なのだ。今日も姫様は鏡の前で変装に余念がない。侍女が悲痛な声で叫ぶ。「姫様、お願いですから、推し活で城を...
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#139 我らNPC、ニセ勇者御一行様

「我々って、もしかして脇役ですか?」そんな疑惑が冒険の最中に浮上したのは、仲間たちが焚き火を囲んだある夜のことだった。一応、魔王討伐を掲げてはいるものの、勇者でも賢者でもない、戦士でもない。はたまた謎めいた美しき姫君でもなければ、魔王討伐を...