ちいさな物語 #315 魔法の使えない魔道士と飛べないドラゴン シルグは、村一番の役立たずの魔道士だった。幼い頃から魔力の才能に乏しく、いつも魔法を失敗しては笑われ、誰からも馬鹿にされた。村の者たちは呆れて言ったものだ。「お前の魔法なんて、風に揺れる葉っぱほどの役にも立たないな」だから彼が村を飛び出し旅... 2025.07.05 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #307 虹の終点、ランティス渓谷で 僕らの旅は風まかせ。一応、冒険者を名乗っているが、危険なことは一切しない。いつも前を歩くのは快活なカナ、風景をスケッチするのは双子の妹のリナ、そして僕――地図と胃袋を預かっている。ほんのちょっとだけ剣が扱えなくはないが、この旅に出てから一度... 2025.07.01 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #303 姫、魔王城に留学する 「魔王様、私、ここで勉強したいんです」魔王城の玉座の間で、姫はにこやかな表情で魔王に入学願書を差し出した。「勉強だと? ここは学び舎ではないぞ」魔王は困惑して角の生えた頭を掻いた。そもそも姫は人質として攫ってきた存在である。泣いて救出を待つ... 2025.06.27 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #289 俺は勇者の仲間になりたかった 俺は勇者に憧れていた。子供の頃からのゲームオタクで、勇者たちの冒険物語に夢中。いつか必ず勇者の仲間として魔王を倒す――その夢を叶えるために、俺は可能な限りあらゆる修行を積んだ。そして、交通事故からの異世界転生と、とんとん拍子に話は進む。転生... 2025.06.17 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #276 笑う城 深い森の奥、鬱蒼とした樹々の向こうに、古びた城がひっそりと佇んでいる。 その城は数百年前に滅んだ王国の遺物であり、地元の人々からは不吉な噂が絶えなかった。噂の内容はこうだ。城に入った者はみな、不思議な『笑い声』を聞くという。壁が、床が、天井... 2025.06.09 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #271 風の旅路 「どうして私がこんな無計画な男と旅をする羽目になったのだろう」魔道士エルドは深いため息をついた。彼の前で陽気にリュートをかき鳴らしているのは、楽士のジーノ。天性の放浪者である彼は、旅する町々で歌と酒を楽しみながら自由気ままに生きている。一方... 2025.06.05 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #230 転生したらパーティにコンビニ店員がいた件 「転生です、おめでとうございます」白い空間で、ローブ姿の女神らしき人がそう告げた。よくある異世界転生モノだ。事故で命を落とした僕は、第二の人生を歩むらしい。「ではスキルを選んでください。剣? 魔法? 錬金術? 他に希望があれば、対応できるか... 2025.05.11 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #219 世界を救った臭い靴 「靴を脱げ、勇者よ!」長老の真剣な声が響くと、僕は困惑した表情で自分の足元を見た。靴?「早く、その靴の臭いで世界を救うのじゃ!」「いや、待ってくださいよ。何を言ってるんですか?」そう言い返した僕の前に、黒い霧のような怪物が迫ってきた。目の前... 2025.05.05 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #206 スキルチェック相談所 「あなたのスキル、無料で診断します――。」古びた木製看板に書かれた文字を眺めながら、僕はため息をついた。冒険者ギルドの試験を三回連続で落ちた帰り道だ。試験官の表情を思い出すと、胸が苦しくなる。戦士志望だが力は並以下。魔法も苦手。特別なスキル... 2025.04.29 ちいさな物語異世界の話