異世界の話

ちいさな物語

#133 ダンジョンの看板

「おい、本気で行くのか?」 背後からジークが声をかけてきた。 「他に方法がないだろ?」 俺たちは迷宮探索者、いわゆるダンジョン攻略のプロだ。だが、今回の依頼は異質だった。 「看板に書かれていることが必ず起こるダンジョン……か」 俺は目の前の...
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#131 祠の管理人

どうしてこうなったのかは分からないが、僕は気が付けば、小さな祠の管理人になっていた。転生した先が伝説の勇者でもなく、かといって魔王でもなく、さして重要ではない祠の管理人だなんて、誰が想像できただろうか。もちろんチートも何もない。初めて目を覚...
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#120 城

あれは妙な一日だったよ、ホント。
朝起きたらいきなり城から来たとかいう使者が家の前に立っててさ、ものすごい丁寧な口調で「あなた様をお迎えにあがりました」って言うわけ。
俺、普通の庶民よ? 貴族でもないし、城に縁なんてあるわけないのにさ。人違...
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#115 ダンジョン・エスコートサービス

「いらっしゃいませ、本日は『ダンジョン・エスコートサービス』をご利用いただき、誠にありがとうございます」赤い口紅が映える艶やかな微笑みを浮かべ、案内人の女性が客人を迎えた。彼女の名はレイナ。かつては名の知れた魔法剣士だったが、現在はこの「ダ...
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#099 魔王の誕生の日

勇者エリックは、血まみれの剣を握りしめ、玉座の間に立っていた。目の前には、ついに追い詰めた魔王ヴァルゼード。長きに渡る戦いに終止符を打つ時が来た。「ついに貴様を倒す時が来たぞ、魔王!」エリックは剣を構える。魔王は深いため息をつき、玉座にもた...
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#094 銀色の親友

俺がそいつと出会ったのは、山道の途中だった。「おい、人間。少し手を貸せ」振り向くと、そこには二足歩行の狼がいた。いや、正確には獣人というやつだろう。狼の頭にたくましい体、しかしその毛並みは不思議なほど滑らかで、銀色に輝いていた。「……しゃべ...
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#070 焚火の夜の奇妙な話

旅の途中、俺は森の奥の開けた場所で焚火の光を見つけた。火を囲むのは四人の旅人。見た感じ知り合い同士というよりはたまたま居合わせただけのようだった。こういう場所では野営に適した場所を取り合うか、何かの縁と割り切るかのどちらかだ。しかしこんな森...
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#064 転生! 異世界ブラック企業

目を覚ますといつもとは違うという感覚があった。「やった……ついに俺も異世界転生か!」佐藤隆司(35歳・社畜)は歓喜した。深夜残業の連続で倒れた記憶がある。ということは、とうとう神様が俺を異世界へ送ってくれたに違いない。なぜそう思うかというと...
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#061 異界の晩餐

気がついたら、俺は見知らぬ城の入口に立っていた。城の入口なんて行ったことはないけど、アニメやゲームなんかで見たのに似てる。見上げんばかりの扉に圧倒された。歩き出すと進むべき廊下の灯りが順番にともって導いてくれる。なんかこれ、ゲームみたいでか...
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#047 魔法使いの処世術

魔法使いとして生計を立てるには、何より堅実であることが重要だ。無駄な戦いはしない。必要以上に目立たない。ギルドの依頼も、地味なものを選ぶのが一番いい。だから、私は基本的にモンスター退治の依頼は避けている。あれは脳筋戦士や派手好きな魔導士に任...