ちいさな物語 #175 わかりやすいご利益のある神社 その神社は、いわゆる人ぞ知る存在だった。山の中腹、朽ちかけた鳥居をくぐり、急な石段を上った先に、ぽつんとある。観光案内所の地図にも載っていないし、グーグルマップでも「神社」としか出ない。神社マニアの僕だから存在に気づいたようなものだ。だが、... 2025.04.13 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #171 空き缶の恩返し その日は特に変わったこともなく、俺は学校からの帰り道を歩いていた。ふと足元を見ると、道端に潰れた空き缶が転がっている。ジュースの缶だ。誰かが適当に捨てたのだろう。「まったく、マナーがなってないな……」俺は溜息をつきながら、その缶を拾い、近く... 2025.04.11 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #170 地下三階 放課後、僕たちはとうとう旧校舎の地下へ続く階段を見つけてしまった。噂では地下に三階まであるらしいけれど、階段を見つけられなくて、降りられないらしい。クラスでも何人かが階段を探しに行ったが、なかったと言っていた。そう聞くと地下を確かめたくなる... 2025.04.11 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #168 勇魚の骨と海神の約束 むかしむかし、海辺の村にね、五助という漁師がいたんだと。五助は毎日、小舟に乗って漁をして暮らしておった。ある日、大きな嵐の翌朝に浜辺を歩いていると、見たこともないような大きな骨が砂浜に打ち上げられていたんだそうな。「これは何の骨じゃろう?」... 2025.04.10 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #167 世界中でただ一人 目が覚めると、世界は静寂に包まれていた。いつものように目覚まし時計は鳴らず、窓の外から車の音も、隣人の話し声も生活音もまったく聞こえなかった。不審に思い外に出ると、そこには誰一人いなかった。街は何もかもそのままだったが、ただ人間だけが消えて... 2025.04.09 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #165 老婆の井戸と願いごと 昔むかし、山間の小さな村に、不思議な老婆がおった。 村外れの古い井戸のそばに住んでおっての、井戸を覗き込む者にこう言うんじゃ。「あんた、願いごとを叶えてやろうかの?」じゃが、その願いごとを叶えるには、大切な何かを差し出さねばならんかった。あ... 2025.04.08 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #163 そこにある道 引っ越したばかりのアパートは、静かでとても居心地が良かった。ただ一つ、部屋の真ん中を通る妙な「通り道」があることを除いて。最初に異変を感じたのは引っ越して数日後の深夜だった。寝付けずにぼんやり天井を眺めていると、ふと誰かが部屋の中を横切った... 2025.04.07 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #160 骨笛 トウジがそれを見つけたのは、村の外れの川辺だった。白く乾いた骨が、土に半ば埋もれるようにして転がっていた。鹿の骨だろうか。それとも……。「変わった形だな」拾い上げてよく見ると、中が空洞になっていて、まるで笛のようだった。試しに息を吹き込むと... 2025.04.06 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #159 友達の前世 「俺、前世の記憶があるんだ」そう言ったのは、俺の親友、大輝だった。「また適当なこと言ってんな」俺は笑いながら返したが、大輝は真顔だった。こいつはいつもふざけてばかりなのに、そのときの表情は妙に冷静で、冗談とは思えなかった。「本当だって。……... 2025.04.05 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #158 空色の続き 「ソラ色さん」のブログを見つけたのは、偶然闘病記録に関するまとめ記事を読んだのがきっかけだった。そのブログは、穏やかな日常と病気に対する前向きな気持ちが淡々と綴られていて、どこか心が和んだ。興味を引かれた私は、数年前の記事から順に読み進める... 2025.04.05 ちいさな物語不思議な話