ちいさな物語 #116 開けてはいけない 「古い家なので、あまりそこら中あけたてしない方がいいですよ」不動産屋は鍵を渡すとき、なんだか歯切れの悪い言い方で忠告してきた。古い平屋の一軒家。築100年以上という、味のある古民家だ。確かに派手にいじりまわすと普請が必要になるかもしれない。... 2025.03.15 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #109 終演後の笑い声 売れない芸人の吉村は、漫才師として最後のチャンスを掴もうと、地方の古い劇場にやってきた。その劇場は「必ず笑いが取れる」というジンクスで知られていたが、どこか陰気な雰囲気が漂っていた。「どんなネタでも笑いが起こるなんて、ウソだろ」相方の健太が... 2025.03.11 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #107 すれ違う女性 毎朝、同じ道で同じ時間に、彼女とすれ違っていた。髪の長い女性で、いつも白いブラウスに黒いスカートを履いている。最初は何とも思わなかったが、何度もすれ違ううちに、彼女の存在が気になり始めた。ある朝、勇気を出して「おはようございます」と声をかけ... 2025.03.10 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #103 声を聞いた者 町の外れには、誰も足を踏み入れたがらない古い建物がある。かつては工場だったというが、倒産後は長らく放置され、壁も床も朽ち果て、鉄骨がところどころ剥き出しになっている。噂によれば、廃墟の奥から夜な夜な人の声のようなものが聞こえるらしい。しかし... 2025.03.08 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #095 真夜中のコインランドリー 深夜に洗濯物を抱えてコインランドリーに入ると先客がいた。こんな時間に人と鉢合わせるのはめずらしい。 男は椅子に座り、手元のスマホをぼんやりと眺めていた。年齢は30代後半くらい、やや痩せた体型で、無精ひげが伸びている。 僕は洗濯機に服を放り込... 2025.03.04 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #085 11時43分 このマンションに引っ越してきて、一ヶ月が経つ。仕事にも慣れ、夜は静かに過ごせるかと思っていた。だが、あることが気になっている。——毎晩、天井から音がするのだ。最初は気にしなかった。マンションなら生活音が響くのは仕方がない。だが、不思議なこと... 2025.02.27 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #062 回覧板の掟 「回覧板が来たら、すぐに回してくださいね」このマンションに引っ越してきたばかりの俺に、管理人は念を押すように言った。何度も、何度も。まるで、それが最も重要なルールであるかのように。よっぽどマナーのない人がいるんだろうかと少し不安になる。しか... 2025.02.16 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #054 隣の墓 祖母の墓参りに行くたび、気になることがあった。隣の墓が、いつも荒れている。雑草が生い茂り、墓石には鳥の糞がこびりついていた。供え物もなく、線香の燃えた跡すらない。「誰もお墓参りに来ないのかな……」私は何とはなしに、その墓の前にしゃがんだ。墓... 2025.02.12 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #049 深夜2時の怪奇配信 俺の名前は佐々木翔。登録者12人の弱小YouTuberだ。しかも、その12人のうち半分はリアルな知り合い。お付き合いとして登録してくれたものの、見てないのは分かっている。でも俺は、毎晩ひっそりと配信を続けていた。俺のチャンネル名は「翔のミッ... 2025.02.09 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #022 新法 ええ? 異常がないってどういうこと?? 頭痛がするんだよ、先生。えむあーる、何? もっと詳しい検査をするってこと? いやでもそういうのって高いんでしょ。病院は金儲けばっかり考えてすぐそういうこというからヤになるよ。今日もようやく仕事抜けて来... 2025.01.27 ちいさな物語怖い話