変な話

ちいさな物語

#484 ロボット掃除機、逃走中

うちのロボット掃除機が逃げた。本当に、逃げた。電源も入れてないのに、玄関のドアの隙間からスッと出ていったのだ。夜中の二時。寝ぼけた俺の目には、あの丸いフォルムがまるで忍者のように見えた。「おい! お前、どこに行く!」叫んだが、返事はない。代...
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#482 かわいすぎる親友

「なあ、どう思う?」昼休み、いつものようにコンビニ弁当を食べていた俺の前に、見知らぬ女子が立っていた。いや、正確には女子じゃない。「……お前、マジで誰?」「俺だよ、健太」それを聞いた瞬間、弁当の唐揚げをのどに詰まらせた。ゴホゴホ言いながら、...
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#480 六角の席

その日は教室の席替えの日だった。いつもなら机を動かして終わりなのに、急に担任が妙に楽しげに言った。「今日から特別な配置にする。六角形だ」うちの担任は少し変わっていて、いきなりこういうことをしだすのはよくあることだった。クラス中が「ハイ、ハイ...
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#468 作られた呪物

「なあ、呪いのアイテム作ろうぜ」昼休み、いきなりそんなことを言い出したのは友人の小田だった。「……お前、また変な動画でも見たのか?」「違うって! 『呪物作ってみた』系の動画が流行ってんの! それで俺らもやってみようぜって」変な動画、見てるじ...
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#461 商店街サバイバルゲーム

俺たちの商店街で「サバイバルゲーム」が始まったのは、文房具店のカミさんが言い出したのがきっかけだった。「そんな喧嘩するくらいなら、いっそゲームで決めちまいな」実はうちの商店街は最近派閥争いが激化していた。二つに割れた派閥――若手派と古参派。...
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#459 スクランブル交差点のハイタッチ

聞いてくれ。渋谷スクランブル交差点で、最近とんでもない現象が起きてるんだ。俺が最初に見たのは金曜の夜だった。人混みの中、サラリーマンが突然すれ違いざまに若者とハイタッチしたんだよ。「パァン!」っていい音立ててな。で、二人とも満面の笑み。「え...
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#453 名もなき戦国武将、JKに憑く

あれは二年生の修学旅行で京都に行ったときのことなんだ。普通なら清水寺とか金閣寺とか、有名どころに行くはずでしょ? でもうちの学校はちょっと変わってて、先生が歴史マニアだったのね。だから旅程の中に「古戦場めぐり」なんていう地味ぃ〜なイベントが...
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#451 食玩コレクションの部屋

最初にその食玩を手に取ったのは、コンビニのレジ横でした。小さな箱にカラフルなキャラクター。子ども向けの菓子かと思ったんですが、なぜか大人の僕まで惹きつけられたんです。「全12種類+シークレット1種」おまけのフィギュアは、古風な人形や見知らぬ...
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#448 刺身の旅

あれは、忘れもしない晩酌の夜のことだ。スーパーで買ったパックの刺身を皿に並べて、醤油を用意し、さあ一口……と箸を伸ばした瞬間、声がした。「まだだ。まだ食うな」僕は手を止めた。部屋には僕ひとり。だが声は確かに聞こえた。「ここだ、ここだよ。お前...
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#446 セルフ化社会

あんたは最近「セルフ〇〇」ってやつをよく聞くと思わないか?セルフレジ、セルフ脱毛、QRコードでセルフ注文するカフェ……最初はその程度だった。人件費削減だの効率化だの言われて、「自分でやる方が早い」って便利がられていた。でもな、気がついたら街...