変な話

ちいさな物語

#363 朝活のテーマ

朝5時、都内のとあるカフェ――。夜明け前の静寂を破るべく、今日も「意識高すぎるサラリーマン」たちがぞろぞろとやって来る。スーツ、MacBook、論文プリント、手描き図解、タブレット端末、プロテインのボトル。「おはようございます、今日も『朝』...
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#358 コンビニ夜勤は満員御礼

「夜勤って静かで楽だよ」バイト初日にそう言い切った先輩の顔を思い出しながら、タケダはため息をついた。現在、午前0時3分。商店街の端っこにある我らがコンビニ「まるまるマート」。世の中のほとんどが寝静まるこの時間、なぜかこの店だけは常連たちのア...
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#347 人類みんな変人化計画

ある朝、世界中のAIが突然嘘をつき始めた。スマホのアシスタントAI、ナビゲーションシステム、チャットボット……。ありとあらゆる人工知能が、口をそろえて奇妙でシュールな嘘を人々に吹き込み始めたのだ。「本日、地球は楕円形になりました。バランスを...
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#343 独裁トースト

共和国の独裁者デメトリオス三世は、ある朝突然叫んだ。「トーストが国家転覆を狙っている!」誰もが耳を疑ったが、独裁者の命令は絶対である。即座に全国民にトースト禁止令が布告され、各家庭に配布されたパンの焼き加減確認官たちが、毎朝抜き打ちで各家庭...
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#339 真夏の犬はスイカを転がす

うだるような真夏の午後、庭で扇風機の風を浴びながらうたた寝をしていたら、飼い犬のチャッピーが唐突に言った。「なあ、夏といえばスイカだろ?」僕は目を開けるのも億劫だったので、そのまま曖昧に頷いた。するとチャッピーはさらに言葉を続ける。「じゃあ...
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#336 しゃべるネクタイ

「んんー、朝はやっぱりネクタイ締めるの、窮屈だな」出勤準備でまだぼんやりしている僕が、いつも通りネクタイを締めた瞬間だった。「ちょっと! もっと優しく締めろってば!」「ん?」幻聴かな? 疲れすぎだな、と思っていると、またもや首元からはっきり...
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#333 不条理百貨店へようこそ

いつの間にか、その百貨店に足を踏み入れていた。目の前には巨大な吹き抜けが広がり、華やかな照明と軽やかな音楽が流れている。しかし、不思議なことに、入り口を通った記憶がまったくなかった。もしかしてこれは夢か?受付に立っていた店員に、ここがどんな...
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#317 背後のブロッコリー

おかしいんだ。背後霊って、もっとこう不気味なものだろ?  でも俺に取り憑いてるのはブロッコリーなんだ。しかも妙に喋る。最初にその存在に気がついたのは、仕事帰りの電車の中だった。立っていると、首筋の辺りに奇妙な気配がする。振り返ってみても、誰...
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#308 最強バカップル

日曜日の昼下がり、僕はカフェでのんびりとコーヒーを飲んでいた。窓際の席で外を眺めながらぼんやりしていると、向かいの広場に尋常じゃないほど目立つ二人組が現れた。それはまさに「バカップル」と呼ぶにふさわしい光景だった。まず、二人ともお揃いの派手...
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#296 幽霊探偵あらわる

「頼むよ、俺が見えるのはお前だけなんだ!」必死の形相で俺にすがってきたのは、自ら「死んだ」と言い張る男――山岸拓也だった。俺はただ呆然と立ち尽くす。俺だって幽霊なんか好き好んで見たくない。けれど生まれつき見えてしまう体質なのだから仕方ない。...