ちいさな物語

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#047 魔法使いの処世術

魔法使いとして生計を立てるには、何より堅実であることが重要だ。無駄な戦いはしない。必要以上に目立たない。ギルドの依頼も、地味なものを選ぶのが一番いい。だから、私は基本的にモンスター退治の依頼は避けている。あれは脳筋戦士や派手好きな魔導士に任...
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#046 チャラ男ホストの人気の秘密

「いらっしゃいませ~♡ 今夜は姫のために俺を捧げちゃうよん♪」 銀座の高級ホストクラブ。テーブルに座るのは、やや疲れた様子の女性客。彼女の向かいで軽快にシャンパンを開けたのは、No.1ホスト・レイ。 「レイくん、相変わらずチャラいねぇ」 「...
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#045 口の悪い鏡

あれは引っ越して間もない頃でした。新居の洗面所についていた古びた鏡が妙に気になっていて。縁に細かい傷や汚れがあったけれど、それも味があると思ってそのまま使うことにしていたんです。でもある朝、顔を洗おうと鏡に向かうと、低い声が聞こえたんです。...
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#044 親友の秘密

最近、あるチャットアプリにハマっている。そこでは匿名で世界中の誰とでも話せるのだ。ある日、僕は「カエサル」というハンドルネームのユーザーと知り合った。最初は他愛ない雑談だったが、彼の話はちょっとないくらいに知的だった。カエサル: 「今日のニ...
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#043 午前二時のケーキ屋

「いらっしゃいませ」 カラン、と控えめなベルの音とともに、店の奥から店員が現れる。 白いエプロンをつけた女性は、穏やかに微笑んでいた。年齢不詳だがきれいな女性だ。目元には優しさがにじみ、どこか懐かしい雰囲気を醸し出している。 「お好きな席へ...
イヤな話

#042 派遣会社からのご案内

1日目今日から研修が始まった。通知が来たのは一週間前、差出人は登録した派遣会社からだった。無職の俺は断る勇気もなく、指定されたバスに乗り込む。到着したのは山奥の施設。簡素な建物と、ひんやりとした空気が迎えてくれた。初日の課題は「水をバケツで...
SF

#041 宇宙貨物船のA-47

俺が初めてヤツと出会ったのは、辺境の宇宙ステーションだった。貨物船に乗って宇宙を飛び回る俺にも一応雇い主がいる。とりあえず会社の制度にそって仕事をせざるを得ない。「初めまして、ヒューゴ。あなたのサポートとして派遣されました。よろしくお願いし...
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#040 透明人間の帽子

日曜の午後、近所の公園を歩いていると、ふと目に入った木の枝に帽子が引っかかっていた。赤と黒のツートンカラーで、妙に惹かれるデザイン。「誰かの落とし物か?」と、軽い気持ちで帽子を取ってかぶってみた。すると、突然腕が消えた。いや、触ると腕はちゃ...
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#039 選ばなかった道の先に

俺には、「もしも」が見える。たとえば、目の前に二つの選択肢があったとする。右へ行くか、左へ行くか。その瞬間、脳裏にぼんやりとした映像が浮かび上がる。右を選べば雨に降られ、左を選べば財布を落とす。どちらがマシかを考え、俺は最善の道を選ぶことが...
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#038 除霊会社の専属霊媒師(見習い)

「あー、やっぱこの部屋、気配が濃いなぁ……」先輩は無責任につぶやいた。まるで「雨降りそうだなぁ」くらいのゆるさだ。今日もやる気がなさそうで困る。ここは某不動産会社が「夜な夜な幽霊が現れる」と訴えてきたマンションの一室。私たちは知る人ぞ知る事...