ちいさな物語 #035 大統領たちの戦場 人類はようやく「戦争」という概念を進化させた。それは命を奪う血なまぐさい戦場ではなく、世界中のゲーマーが戦場となる仮想空間で戦う「デジタルウォー」だった。勝敗によって国同士の領土や資源が動く仕組みで、リアルの犠牲者はゼロ。だが、それが平和と... 2025.02.02 ちいさな物語変な話
イヤな話 #034 赤信号の横断歩道 大通りに面した横断歩道。車の流れが激しく、歩行者信号が赤から変わる気配はまだない。そんな中、スーツ姿の男がさりげなく前に出た。何気ない動作のように見えるが、視線はスマホに夢中の女性に向けられている。彼女は信号が赤だと確認せず、男の動きに釣ら... 2025.02.02 ちいさな物語イヤな話
ちいさな物語 #033 実況! お弁当戦線 午前の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ると、俺はすかさずカバンの中の弁当箱を取り出した。「さあ、ついにランチタイムのゴングが鳴りました!」心の中で歓喜の声をあげる。俺はひとり興奮しながら机の上に弁当を広げた。今日は母が作ってくれた手作り弁... 2025.02.01 ちいさな物語変な話
SF #032 星間トンネル 私は長いことこの旅を夢見ていた。地球から遠く離れた惑星シリウスBまで、一気にワープする宇宙旅行。だが、ただのワープではない。途中には「星間トンネル」と呼ばれる特別な空間があるのだ。星間トンネルとは、宇宙の裂け目を利用して通常の空間とは異なる... 2025.02.01 ちいさな物語SF
ちいさな物語 #031 後宮の影に咲く花 後宮の暮らしは、美しく輝いているように見えるだろう。煌びやかな着物をまとった妃たちが宮殿を歩き、香が漂う中、静かに時が流れていく。けれど、そこに仕える下女の世界は、泥で濁った沼のようなものだ。誰かが足を取られて沈むのをみんな期待して待ってい... 2025.01.31 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #030 知らない子 いやさ、俺も驚いたんだよ。その夜、残業でくたくたになっていた俺はスマホに留守電が入っているのに気づいた。親から着信が入っていて「今度、お前のところに田舎の親戚の子が行くから、しばらく面倒見てやってくれ」って。いや、俺、仕事忙しいし、何でそん... 2025.01.31 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #029 勇者一行観察日記 まあ、こんなこと人にはあまり言えないけど、私はずっと勇者一行を尾行しているんだ。そう、あの有名な勇者だ。魔王討伐の旅に出たという噂の一団。その行く先をこっそり追いかけ、日々の日記に克明に記している。動機?それはまだ秘密だ。初日、彼らが出発す... 2025.01.30 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #028 地下鉄の幽霊が陽キャだった件 終電の地下鉄って、静かで好きなんだよな。疲れた人たちがほとんど無言で座ってる、あの感じが妙に落ち着く。俺も仕事帰りでヘトヘトだったから、席に腰を落ち着けてスマホで推しのライブ動画でも見ようと思ったんだ。でも、その日は違った。車両の端っこで、... 2025.01.30 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #027 魔法道具屋の厄介な仕事 ガタが来ている店の扉がきしみ、ドアベルが鳴った。入ってきたのは、背の高い男だ。外套のフードを目深に被り、顔はほとんど見えない。でも、感じるんだよ、ただの人間じゃないってことを。「ここは、魔法道具をなんでも直せる店だと聞いた」低い声でそう言わ... 2025.01.29 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #026 中山道の旅 「おい、そこの若者!」と呼び止められたのは、中山道の宿場を抜けて少しした頃だった。振り向くと、一人の侍風の男が立っていた。いや、侍風というのも妙な表現だが、何せその格好が奇妙だったのだ。立派な刀を腰に差しているものの、着物は古びて裾がほつれ... 2025.01.29 ちいさな物語変な話