SF #132 一人きりの戦争 僕はこの星に来た最初の人間だった。惑星オルフィス。 この新しい星に、僕以外の人間はいない。 共に暮らす仲間は、すべてアンドロイドだった。僕は特に母親代わりのアンナや祖父のような距離で見守ってくれたエリックが大好きだった。彼らは機械だが、僕に... 2025.03.23 ちいさな物語SF
ちいさな物語 #131 祠の管理人 どうしてこうなったのかは分からないが、僕は気が付けば、小さな祠の管理人になっていた。転生した先が伝説の勇者でもなく、かといって魔王でもなく、さして重要ではない祠の管理人だなんて、誰が想像できただろうか。もちろんチートも何もない。初めて目を覚... 2025.03.22 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #130 木蓮の歌 祖母の家の庭には、大きな木蓮の木があった。春になると白い花が咲き誇り、甘く濃厚な香りを漂わせる。その美しさもさることながら、僕にはずっと気になっていることがあった。それは——木蓮が歌うこと。咲いている時期だけ、微かな歌声が聞こえるのだ。「お... 2025.03.22 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #129 感染する怪談 「この話を聞いたら、お前も同じ目に遭うよ」そう言って、友人の中村は妙に真剣な顔をした。「……何の話だよ」「伝染する怪談さ」久しぶりに学生時代の友人たちと飲み会を開いた。帰り道、深夜の公園のベンチで、俺と中村は二人で酔いざましと称してぐだぐだ... 2025.03.21 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #128 手厚い葬儀屋 「あそこの葬儀屋、サポートが異常に厚いらしい」そんな噂を耳にしたのは、病院の帰りの居酒屋だった。退院してから、ここぞとばかりにいろんな知人に連絡をとって遊びまわっている。その知人の一人が酒を片手に話し始めた。「遺族への対応が丁寧なのはもちろ... 2025.03.21 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #127 落ちてきた雲 朝、目を覚ました瞬間、異変に気づいた。カーテンを開けると、目の前の景色に息をのんだ。空はびっくりするほどの快晴で、そこは別にいいのだが、問題は――雲がすべて落ちてきていた。町中が、白くもこもこした塊で埋め尽くされている。電線も信号も、車も家... 2025.03.20 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #126 桜の散る夜 昔々、と言うほどではないが、今よりずっと昔の話だ。ある村のはずれに、大きな桜の木があった。それは見事な一本桜で、春になると村中の者が見に行くほど美しかった。だが、不思議なことに、桜の散る夜にだけ、そこに娘が現れるという噂があった。その娘は、... 2025.03.20 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #125 剛毛の生えてくる道 俺が毎日通る道には誰も通らない細い裏道がある。表通りを歩けばいいのに、わざわざそこを使うのは、なんとなくその雰囲気が好きだからだった。古びたレンガの壁が両側に立ち並び、湿った匂いが漂う。昼間でも少し薄暗く、まるで時間が止まったような場所。日... 2025.03.19 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #124 右手の暴走 きっかけは、中古屋で買った一本の万年筆だった。アンティーク風で格好良く、気に入って即購入。しかしペンとその蓋をとめるように小さな紙が貼ってある。よく見るとそれは……。「お札?」小さいながらも神社のお札のような模様がびっしりと書き込まれている... 2025.03.19 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #123 青い鳥 「おい、見ろよ!」友人のツヨシが興奮した声で俺を呼ぶ。指さした先にいたのは――青い鳥だった。ただの青じゃない。夜明け前の空のような深い青、青い炎のように揺らめく羽。その存在感は現実味がなく、まるで絵本の中から飛び出してきたみたいだった。「マ... 2025.03.18 ちいさな物語不思議な話