ちいさな物語

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#468 作られた呪物

「なあ、呪いのアイテム作ろうぜ」昼休み、いきなりそんなことを言い出したのは友人の小田だった。「……お前、また変な動画でも見たのか?」「違うって! 『呪物作ってみた』系の動画が流行ってんの! それで俺らもやってみようぜって」変な動画、見てるじ...
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#467 異世界転移! 防災リュックの中身がチート級で楽勝?

会社の防災訓練。たったそれだけのはずだった。なのに、今俺は剣を握りしめ、火を吐くトカゲみたいな魔物に囲まれている。——なぜこうなったのか。話せば長い。その朝、課長が妙に面倒くさそうに言った。「今日、防災訓練。各部署から一名ずつ参加……だそう...
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#466 帽子の下にあるもの

最寄り駅から自宅までの道のりは、徒歩で五分。短い距離だが、最近どうしても気になることがあった。駅から自宅への道のちょうど真ん中辺り、交差点から三本目の電信柱——ちょうどその街灯の真下で必ず同じ人物とすれ違うのだ。深く帽子をかぶった黒いコート...
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#465 あぜ道にいるもの

あれは、三年前の秋だった。その日は仕事帰りで、少し遠回りをして歩いていた。空気がひんやりして、稲穂の匂いが夜風に混じっていた。最寄り駅から自宅までの田んぼの間を抜ける道を歩いていたとき、視界の端にふわりと光るものが見えたんだ。最初はこんな季...
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#464 神様の同居人

ある日、道端でボロボロの男を拾った。彼は「神だ」と名乗った。最初は信じなかったが、彼が見せた小さな奇跡を見てしまった。その日から、俺の家に神様が住みついた。やがて、彼はこの世界に再び“祈り”を取り戻していく。(文字数:)「#464 神様の同...
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#463 人気居酒屋の凋落

うちの居酒屋「いろは」は、三年前までは本当に人気店だった。駅前から少し離れた裏通りにある小さな店なのに、連日満席。店長の料理の腕が良いのはもちろん、どの客にもフレンドリーに話しかける人柄も評判だった。でも、なぜか客足が減っていった。常連客が...
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#462 宇宙人たちの侵略会議

あれは、数年前のことだ。正直、信じてもらえるとは思っていない。けれど、僕はあの日、本当に「宇宙人の侵略会議」を聞いてしまったんだ。その晩、僕は会社の帰り道、公園のベンチに腰を下ろしてコンビニで買ったコーラを飲んでいた。一人でこうやってくつろ...
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#461 商店街サバイバルゲーム

俺たちの商店街で「サバイバルゲーム」が始まったのは、文房具店のカミさんが言い出したのがきっかけだった。「そんな喧嘩するくらいなら、いっそゲームで決めちまいな」実はうちの商店街は最近派閥争いが激化していた。二つに割れた派閥――若手派と古参派。...
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#460 無人島の光るラーメン

船が嵐に呑まれたのは、確か夜明け前のことだった。暗闇の中、船体が裂けるような音を立て、僕は波に放り出された。気がつけば無人島の浜辺に打ち上げられていた。傷だらけの体と、骨の髄まで染み込んだ疲労。多くはないサバイバル知識で数日はなんとか少ない...
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#459 スクランブル交差点のハイタッチ

聞いてくれ。渋谷スクランブル交差点で、最近とんでもない現象が起きてるんだ。俺が最初に見たのは金曜の夜だった。人混みの中、サラリーマンが突然すれ違いざまに若者とハイタッチしたんだよ。「パァン!」っていい音立ててな。で、二人とも満面の笑み。「え...