SF #404 最後の告白 夜風が静かに吹く中、私は公園のベンチに座っていた。隣には彩花がいる。彼女とは幼い頃からの親友だ。何でも話せる関係だと思っていた――いや、本当はずっと隠していた。「何? こんな夜中に呼び出して。何かあった?」彩花が首を傾げる。彼女の声があまり... 2025.09.05 ちいさな物語SF
SF #403 昇降の途中 エレベータの扉が閉まる音は、思いのほか軽やかだった。だが、その先に待つ旅路は軽やかとは言えない。地上から宇宙ステーションまで、数時間かけて上昇する。「長いなあ」隣でつぶやいたのは、作業着姿の中年の男だった。額に汗が浮かんでいるが、慣れている... 2025.09.04 ちいさな物語SF
SF #387 二つ目の地球 コールドスリープ――それを聞いたとき、僕は未来の神話みたいに思った。数百年に及ぶ宇宙航行の間、冬眠のように眠り、目的地に着いたら目覚める。そんな技術がなければ、人類は太陽系の外に出ることなど不可能だった。そして今、僕はその実験航行のクルーの... 2025.08.26 ちいさな物語SF
SF #354 氷の奥で眠るもの その氷層は、南極の無人地帯にひっそりと眠っていた。調査隊が偶然に掘り当てた、地表から深さ約百二十メートルの地下空間。気温は常に氷点下八十度を下回り、人が簡単に足を踏み入れることを許さない場所だった。調査隊のベテランたちは、その地下空間の存在... 2025.07.31 ちいさな物語SF
SF #352 忘れられたロボット 宇宙の片隅に、ひっそりと漂う古い宇宙ステーションがあった。そこにはたった1台のロボットが、長い時間をひとりで過ごしていた。ロボットの名はエル。人類が宇宙に進出し始めた頃に作られた、初期型の人工知能搭載ロボットだった。エルには重要な任務があっ... 2025.07.30 ちいさな物語SF
SF #348 不幸を願う幸福の手紙 その奇妙な「不幸の手紙」は、ある朝、突然僕のスマホに届いた。送り主の名前はない。ただシンプルなメッセージが表示されているだけだった。『この手紙を7人に送らないと、あなたに小さな不幸が訪れます』僕は鼻で笑った。こんな時代に不幸の手紙なんて、古... 2025.07.28 ちいさな物語SF
SF #345 最後のジョーク その日、朝から奇妙なニュースが流れていた。科学者たちが巨大な隕石が地球に衝突すると断言したのだ。どのテレビ局も『残り24時間』というタイマーを画面の端に表示し、街は緊張に包まれる――はずだった。しかし、実際には奇妙なことが起きていた。街頭に... 2025.07.27 ちいさな物語SF
SF #334 漫才宇宙船、銀河をゆく 「おいルミナ、宇宙船の操縦AIがこんなにしゃべるの、おかしくないか?」キャプテンの軽口に、AIのルミナがすかさず応じる。「キャプテン、それは私が言いたいセリフですよ。ちゃんと働いてます?」船内に笑いが広がる。宇宙船『スターバースト号』は、キ... 2025.07.18 ちいさな物語SF
SF #311 彗星が落ちたあとの話 彗星が落ちたという丘に足を踏み入れたのは、夏の終わりだった。丘には不自然なくぼみがあり、その底で一人の少女が空を見上げている。その光景はかなり奇妙だったが、なぜか僕は怖くなかった。「君、大丈夫?」声をかけると少女はゆっくりと振り返った。月の... 2025.07.03 ちいさな物語SF
SF #297 逃げるマウスの秘密 「あれ?カーソルが……」深夜を過ぎた頃、僕はデスクに向かい、ふと画面に目をやった。すると、画面上のカーソルが、誰も触れていないはずのマウスに合わせて、突然ひとりでに動き始めたのだ。カーソルは不規則に震え、ゆっくりと画面の隅まで滑っていく。そ... 2025.06.24 ちいさな物語SF