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#541 トースター・オーバースペック

僕はただ単純に、カリッとしたおいしいトーストが食べたかっただけなのだ。引っ越してから今まで忙しくて必要最低限の家電しかそろえていない。だからトースターを持っていなかったんだ。これまでパンは焼かずにそのまま口にしていた。そこでいよいよ細々とし...
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#539 この星は悪くない

あれは確か、夜風がやけに冷たく感じられる晩だった。仕事帰り、私は河川敷に腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げていた。特別な理由はない。ただ、星を見ていると、今日一日の出来事がすべて収まっていくような感じがして落ちつくからだ。そのときだった。空の...
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#536 地球引越し計画

地球を丸ごと引越す、と博士が言い出した。朝のニュース番組で突然その一言が流れた瞬間、コメンテーターは誰も口を開かなかった。台本になかったんだろう。しんと静まり返っている。司会者がなんとか場をつなごうとして拍手した。「すごいですねっ!」発言し...
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#490 冬の花火と宇宙人八割時代

地球がかなり宇宙勢力に負け始めていると気づいたのは、確か三年前の冬頃だったと思う。ニュースで「すでに世界人口の八割が宇宙人でした」と発表されたのがきっかけだ。アナウンサーが笑顔で言っていた。まるで「明日は晴れるでしょう」と同じテンションで。...
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#486 転校生の秘密

あの日、教室のドアが開いた瞬間、空気が変わった。転校生の悠木さん。その瞬間、ざわめきすら止まったのを覚えている。誰もが彼女を見た。息をのむような美しさというやつだ。黒くてまっすぐな髪。光を吸い込むような瞳。ただの高校生とは思えない、異様な静...
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#471 宇宙海賊の長い一日

宇宙海賊の仕事ってのは、聞こえほど華やかじゃない。ドンパチして、略奪して、逃げ切って、金を数えて笑う――そんなのは映画の中の話だ。現実は、燃料費と修理費で利益はほぼチャラ。だから俺は、できるだけ効率的にラクして稼ぐのを信条にしている。「――...
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#458 UFOを呼べ!

あのときの宿題は、今でも忘れられない。中学二年の夏休み明け、理科担当の変人教師、藤巻先生が言ったんだ。「次回の宿題は――UFOを呼んでくること!」クラス中が爆笑したよ。「先生またふざけてる!」って。だけど、先生は本気の顔をしていた。「宇宙は...
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#432 みらいさま

むかしむかし、ある山あいの村に奇妙なものが落ちてきたそうな。夜の空が昼のように明るくなり、どーんと火の玉がすっと降りてきて、畑の真ん中に黒い箱を残したのじゃ。村人たちは驚いて集まり、その箱を囲んだ。「これはなんじゃ」「火薬か、それとも鬼の道...
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#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...
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#419 昨日まで住んでいた星

目を覚ましたとき、空の色が違っていた。昨日まで住んでいた星の空は、柔らかな青だったはずだ。けれど今日見上げる空は、薄紫に揺らめき、星々が昼間から淡く瞬いていた。喉が乾き、空気を吸い込む。微かに甘い匂いがした。「……ここはどこだ」周囲を見渡す...