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#486 転校生の秘密

あの日、教室のドアが開いた瞬間、空気が変わった。転校生の悠木さん。その瞬間、ざわめきすら止まったのを覚えている。誰もが彼女を見た。息をのむような美しさというやつだ。黒くてまっすぐな髪。光を吸い込むような瞳。ただの高校生とは思えない、異様な静...
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#471 宇宙海賊の長い一日

宇宙海賊の仕事ってのは、聞こえほど華やかじゃない。ドンパチして、略奪して、逃げ切って、金を数えて笑う――そんなのは映画の中の話だ。現実は、燃料費と修理費で利益はほぼチャラ。だから俺は、できるだけ効率的にラクして稼ぐのを信条にしている。「――...
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#458 UFOを呼べ!

あのときの宿題は、今でも忘れられない。中学二年の夏休み明け、理科担当の変人教師、藤巻先生が言ったんだ。「次回の宿題は――UFOを呼んでくること!」クラス中が爆笑したよ。「先生またふざけてる!」って。だけど、先生は本気の顔をしていた。「宇宙は...
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#432 みらいさま

むかしむかし、ある山あいの村に奇妙なものが落ちてきたそうな。夜の空が昼のように明るくなり、どーんと火の玉がすっと降りてきて、畑の真ん中に黒い箱を残したのじゃ。村人たちは驚いて集まり、その箱を囲んだ。「これはなんじゃ」「火薬か、それとも鬼の道...
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#422 人類最後の観察日記

【9月14日】九月も半ばだというのに真夏みたいな暑さだ。夕立の後、川沿いを歩いていたら、奇妙な光を放つ石のようなものを見つけた。拾い上げると、石ではなく卵らしかった。手のひらよりも少し大きく、青白く脈打つように光っている。湿った空気と蝉の声...
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#419 昨日まで住んでいた星

目を覚ましたとき、空の色が違っていた。昨日まで住んでいた星の空は、柔らかな青だったはずだ。けれど今日見上げる空は、薄紫に揺らめき、星々が昼間から淡く瞬いていた。喉が乾き、空気を吸い込む。微かに甘い匂いがした。「……ここはどこだ」周囲を見渡す...
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#415 孤独なるプロメテウス

私は惑星探査機、正式名称は「プロメテウス-XIII」。私の使命は広い宇宙を探索し、生命の痕跡を探してデータを地球へと送り返すこと。そう、冷たい金属の塊である私に心などあるはずがなかった。だが何千年も孤独な星間の旅を続けるうちに、私は自分が考...
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#404 最後の告白

夜風が静かに吹く中、私は公園のベンチに座っていた。隣には彩花がいる。彼女とは幼い頃からの親友だ。何でも話せる関係だと思っていた――いや、本当はずっと隠していた。「何? こんな夜中に呼び出して。何かあった?」彩花が首を傾げる。彼女の声があまり...
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#403 昇降の途中

エレベータの扉が閉まる音は、思いのほか軽やかだった。だが、その先に待つ旅路は軽やかとは言えない。地上から宇宙ステーションまで、数時間かけて上昇する。「長いなあ」隣でつぶやいたのは、作業着姿の中年の男だった。額に汗が浮かんでいるが、慣れている...
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#387 二つ目の地球

コールドスリープ――それを聞いたとき、僕は未来の神話みたいに思った。数百年に及ぶ宇宙航行の間、冬眠のように眠り、目的地に着いたら目覚める。そんな技術がなければ、人類は太陽系の外に出ることなど不可能だった。そして今、僕はその実験航行のクルーの...