SF #255 幸福化社会にて、鳥は歌わず 働かなくていい。食事も、運動も、睡眠すらも必要ない。人工代謝調整、神経伝達最適化、精神恒常性維持装置。技術の進歩によって人間の「必要」はすべて満たされた。娯楽は無限、痛みは除去され、争いも淘汰された。幸福化と名付けられたこの新しい時代の到来... 2025.05.26 ちいさな物語SF
SF #226 ほしから来たひと あんたに話しておこうかね。この村の話さ。もう、誰も覚えていないかもしれんけど、あたしゃちゃんと見たんだよ。忘れるもんかい、あんな人。あれは、わしがまだ小娘だったころ――そうさね、戦のあとで、村にもやっと灯りが戻ってきたころだよ。ある晩、山の... 2025.05.09 ちいさな物語SF
SF #218 新天地の孤独 目覚めた瞬間、僕は凍えるような寒さと眩しい光に包まれていた。意識が少しずつ鮮明になり、ゆっくりと目を開ける。薄暗いキャビンの中、コールドスリープのカプセルが整然と並んでいた。「乗務員ナンバー14、目覚めを確認。おはようございます、アンソニー... 2025.05.05 ちいさな物語SF
SF #166 隕石から生まれたもの ある朝、庭に見知らぬ隕石が落ちていた。拳ほどの大きさのそれは、奇妙に脈動しており、気持ち悪いので触る気になれず放置していた。数日後、その気持ち悪い隕石が割れて何かが生まれてきた。それは透明でゼリー状のアメーバみたいなものだったが、僕がそれを... 2025.04.09 ちいさな物語SF
SF #151 月の民宿 月面の端っこで、私たち家族は小さな民宿を営んでいる。父と母と私、それからゲツメンシロウサギのミミちゃん。ミミちゃんの先祖は地球のウサギなんだけど遺伝子が組み換えられた人為的な新種なんだって。ここの民宿にお客はほとんど来ない。地球人なんて、な... 2025.04.01 ちいさな物語SF
SF #145 星を繋ぐ糸電話 ある夜、庭で星空を眺めていると、ふと空から何かが落ちてきた。地面に落ちたのは、懐かしい紙コップの糸電話。だが、その糸は細く光り輝き、どこまでも空に向かって伸びているように見えた。「何だろう、これ?」私は不思議に思いながらも耳元にコップを当て... 2025.03.29 ちいさな物語SF
SF #141 ホーム ◆第8期惑星歴215年・第3恒星航路41日目今日、私は地球に降り立った。この任務に志願したとき、同僚たちは皆、奇異な目で私を見た。「なぜ、あんな無人の星へ?」その理由は私にもよくわからない。ただ、“地球”という響きに、抗えない引力のようなも... 2025.03.27 ちいさな物語SF
SF #137 燃やす者 「また燃えてるな、タクミくん」深夜、カズマはモニター越しに、SNSの炎上トレンドを眺めていた。 そこには、またしても“迷惑系YouTuber・タクミ”の名があった。 今度は老人を突き飛ばす動画。笑い声、スローモーション、煽り字幕。 炎上は爆... 2025.03.25 ちいさな物語SF
SF #132 一人きりの戦争 僕はこの星に来た最初の人間だった。惑星オルフィス。 この新しい星に、僕以外の人間はいない。 共に暮らす仲間は、すべてアンドロイドだった。僕は特に母親代わりのアンナや祖父のような距離で見守ってくれたエリックが大好きだった。彼らは機械だが、僕に... 2025.03.23 ちいさな物語SF
SF #114 星のさざ波 ――宇宙の果てには、奇妙なものが転がっている。銀河系を越え、まだ名もついていない星雲を渡り歩く旅商人ルカには、そう確信する理由があった。彼の相棒は陽気なアンドロイド、アーロ。表情こそ微妙にぎこちないが、ジョークのタイミングは抜群で、冷めきっ... 2025.03.14 ちいさな物語SF