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#151 月の民宿

月面の端っこで、私たち家族は小さな民宿を営んでいる。父と母と私、それからゲツメンシロウサギのミミちゃん。ミミちゃんの先祖は地球のウサギなんだけど遺伝子が組み換えられた人為的な新種なんだって。ここの民宿にお客はほとんど来ない。地球人なんて、な...
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#145 星を繋ぐ糸電話

ある夜、庭で星空を眺めていると、ふと空から何かが落ちてきた。地面に落ちたのは、懐かしい紙コップの糸電話。だが、その糸は細く光り輝き、どこまでも空に向かって伸びているように見えた。「何だろう、これ?」私は不思議に思いながらも耳元にコップを当て...
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#141 ホーム

◆第8期惑星歴215年・第3恒星航路41日目今日、私は地球に降り立った。この任務に志願したとき、同僚たちは皆、奇異な目で私を見た。「なぜ、あんな無人の星へ?」その理由は私にもよくわからない。ただ、“地球”という響きに、抗えない引力のようなも...
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#137 燃やす者

「また燃えてるな、タクミくん」深夜、カズマはモニター越しに、SNSの炎上トレンドを眺めていた。
そこには、またしても“迷惑系YouTuber・タクミ”の名があった。
今度は老人を突き飛ばす動画。笑い声、スローモーション、煽り字幕。
炎上は爆...
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#132 一人きりの戦争

僕はこの星に来た最初の人間だった。惑星オルフィス。
この新しい星に、僕以外の人間はいない。
共に暮らす仲間は、すべてアンドロイドだった。僕は特に母親代わりのアンナや祖父のような距離で見守ってくれたエリックが大好きだった。彼らは機械だが、僕に...
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#114 星のさざ波

――宇宙の果てには、奇妙なものが転がっている。銀河系を越え、まだ名もついていない星雲を渡り歩く旅商人ルカには、そう確信する理由があった。彼の相棒は陽気なアンドロイド、アーロ。表情こそ微妙にぎこちないが、ジョークのタイミングは抜群で、冷めきっ...
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#090 ネオン街のヘンゼルとグレーテル

ナイトシティのスラム街。そこに生きる者は皆、飢えと暴力に耐えながら暮らしている。ヘンゼルとグレーテルも例外ではなかった。「また、食べ物探しに行くの?」妹のグレーテルが、不安そうに兄のヘンゼルを見上げる。「他に生きる道があるか?」二人は孤児だ...
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#073 鋼の神と電子の記憶

むかしむかし——いや、そう遠くない未来のちょっと先の話だ。その街には、かつて「鋼の神」と呼ばれるものがいた。神といっても、伝説の神々のように天上から奇跡を降らせるわけではない。それは巨大な機械仕掛けの存在であり、この都市を守護するために作ら...
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#067 シカですか?

「では、これが未来の移動手段となる『シカライド』です!」壇上で発表されたのは、最新型の電気自動車……ではなく、一頭の立派な鹿だった。静まり返る会場。聴衆は何かの冗談かと思い、ざわつき始める。しかしプレゼンターの科学者は至って真剣な表情だ。「...
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#063 ゼロの先に

なあ、お前も見ただろ? ほら、あのカウントダウンのことだよ。最初はハッカーによる悪質なイタズラだと思ったんだ。電光掲示板、スマホの画面、時計のディスプレイ、駅の案内板……ありとあらゆる場所に、突如として数字が現れた。しかも、その数字が世界中...