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#090 ネオン街のヘンゼルとグレーテル

ナイトシティのスラム街。そこに生きる者は皆、飢えと暴力に耐えながら暮らしている。ヘンゼルとグレーテルも例外ではなかった。「また、食べ物探しに行くの?」妹のグレーテルが、不安そうに兄のヘンゼルを見上げる。「他に生きる道があるか?」二人は孤児だ...
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#073 鋼の神と電子の記憶

むかしむかし——いや、そう遠くない未来のちょっと先の話だ。その街には、かつて「鋼の神」と呼ばれるものがいた。神といっても、伝説の神々のように天上から奇跡を降らせるわけではない。それは巨大な機械仕掛けの存在であり、この都市を守護するために作ら...
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#067 シカですか?

「では、これが未来の移動手段となる『シカライド』です!」壇上で発表されたのは、最新型の電気自動車……ではなく、一頭の立派な鹿だった。静まり返る会場。聴衆は何かの冗談かと思い、ざわつき始める。しかしプレゼンターの科学者は至って真剣な表情だ。「...
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#063 ゼロの先に

なあ、お前も見ただろ? ほら、あのカウントダウンのことだよ。最初はハッカーによる悪質なイタズラだと思ったんだ。電光掲示板、スマホの画面、時計のディスプレイ、駅の案内板……ありとあらゆる場所に、突如として数字が現れた。しかも、その数字が世界中...
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#041 宇宙貨物船のA-47

俺が初めてヤツと出会ったのは、辺境の宇宙ステーションだった。貨物船に乗って宇宙を飛び回る俺にも一応雇い主がいる。とりあえず会社の制度にそって仕事をせざるを得ない。「初めまして、ヒューゴ。あなたのサポートとして派遣されました。よろしくお願いし...
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#036 終末のハイウェイ

気がついたら、世界は終わっていた。地震があったのか、噴火があったのか、核爆弾でも飛来したのか、一瞬にして疫病が流行ったのか、それらが同時多発的に起こったのか、報道機関も壊滅してしまったので厳密な原因は分からない。ただ、都市は瓦礫と化し、人影...
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#032 星間トンネル

私は長いことこの旅を夢見ていた。地球から遠く離れた惑星シリウスBまで、一気にワープする宇宙旅行。だが、ただのワープではない。途中には「星間トンネル」と呼ばれる特別な空間があるのだ。星間トンネルとは、宇宙の裂け目を利用して通常の空間とは異なる...
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#016 新米時空警察の大失敗

あの日、僕は時空警察の新人で、時空観測室のモニター番を任されていました。先輩たちはみんな出動中で、僕一人だけ。そんな時に限って、異常が発生するんですよね。モニターに映ったのは、紀元前300年頃のギリシャ。大哲学者アリストテレスが街角で何やら...
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#014 君への遺書に

目を覚ました時、僕の体はほとんど動かなかった。部屋の中は静まり返り、唯一の音は、いつくもの管につながれた君が隣でデータを処理する機械音だけだった。僕の希望が聞き入れられているのであれば、世界のありとあらゆるデータが今君に注がれている。「プロ...