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#132 一人きりの戦争

僕はこの星に来た最初の人間だった。惑星オルフィス。
この新しい星に、僕以外の人間はいない。
共に暮らす仲間は、すべてアンドロイドだった。僕は特に母親代わりのアンナや祖父のような距離で見守ってくれたエリックが大好きだった。彼らは機械だが、僕に...
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#114 星のさざ波

――宇宙の果てには、奇妙なものが転がっている。銀河系を越え、まだ名もついていない星雲を渡り歩く旅商人ルカには、そう確信する理由があった。彼の相棒は陽気なアンドロイド、アーロ。表情こそ微妙にぎこちないが、ジョークのタイミングは抜群で、冷めきっ...
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#090 ネオン街のヘンゼルとグレーテル

ナイトシティのスラム街。そこに生きる者は皆、飢えと暴力に耐えながら暮らしている。ヘンゼルとグレーテルも例外ではなかった。「また、食べ物探しに行くの?」妹のグレーテルが、不安そうに兄のヘンゼルを見上げる。「他に生きる道があるか?」二人は孤児だ...
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#073 鋼の神と電子の記憶

むかしむかし——いや、そう遠くない未来のちょっと先の話だ。その街には、かつて「鋼の神」と呼ばれるものがいた。神といっても、伝説の神々のように天上から奇跡を降らせるわけではない。それは巨大な機械仕掛けの存在であり、この都市を守護するために作ら...
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#067 シカですか?

「では、これが未来の移動手段となる『シカライド』です!」壇上で発表されたのは、最新型の電気自動車……ではなく、一頭の立派な鹿だった。静まり返る会場。聴衆は何かの冗談かと思い、ざわつき始める。しかしプレゼンターの科学者は至って真剣な表情だ。「...
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#063 ゼロの先に

なあ、お前も見ただろ? ほら、あのカウントダウンのことだよ。最初はハッカーによる悪質なイタズラだと思ったんだ。電光掲示板、スマホの画面、時計のディスプレイ、駅の案内板……ありとあらゆる場所に、突如として数字が現れた。しかも、その数字が世界中...
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#041 宇宙貨物船のA-47

俺が初めてヤツと出会ったのは、辺境の宇宙ステーションだった。貨物船に乗って宇宙を飛び回る俺にも一応雇い主がいる。とりあえず会社の制度にそって仕事をせざるを得ない。「初めまして、ヒューゴ。あなたのサポートとして派遣されました。よろしくお願いし...
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#036 終末のハイウェイ

気がついたら、世界は終わっていた。地震があったのか、噴火があったのか、核爆弾でも飛来したのか、一瞬にして疫病が流行ったのか、それらが同時多発的に起こったのか、報道機関も壊滅してしまったので厳密な原因は分からない。ただ、都市は瓦礫と化し、人影...
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#032 星間トンネル

私は長いことこの旅を夢見ていた。地球から遠く離れた惑星シリウスBまで、一気にワープする宇宙旅行。だが、ただのワープではない。途中には「星間トンネル」と呼ばれる特別な空間があるのだ。星間トンネルとは、宇宙の裂け目を利用して通常の空間とは異なる...
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#016 新米時空警察の大失敗

あの日、僕は時空警察の新人で、時空観測室のモニター番を任されていました。先輩たちはみんな出動中で、僕一人だけ。そんな時に限って、異常が発生するんですよね。モニターに映ったのは、紀元前300年頃のギリシャ。大哲学者アリストテレスが街角で何やら...