2025-01

ちいさな物語

#031 後宮の影に咲く花

後宮の暮らしは、美しく輝いているように見えるだろう。煌びやかな着物をまとった妃たちが宮殿を歩き、香が漂う中、静かに時が流れていく。けれど、そこに仕える下女の世界は、泥で濁った沼のようなものだ。誰かが足を取られて沈むのをみんな期待して待ってい...
ちいさな物語

#030 知らない子

いやさ、俺も驚いたんだよ。その夜、残業でくたくたになっていた俺はスマホに留守電が入っているのに気づいた。親から着信が入っていて「今度、お前のところに田舎の親戚の子が行くから、しばらく面倒見てやってくれ」って。いや、俺、仕事忙しいし、何でそん...
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#029 勇者一行観察日記

まあ、こんなこと人にはあまり言えないけど、私はずっと勇者一行を尾行しているんだ。そう、あの有名な勇者だ。魔王討伐の旅に出たという噂の一団。その行く先をこっそり追いかけ、日々の日記に克明に記している。動機?それはまだ秘密だ。初日、彼らが出発す...
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#028 地下鉄の幽霊が陽キャだった件

終電の地下鉄って、静かで好きなんだよな。疲れた人たちがほとんど無言で座ってる、あの感じが妙に落ち着く。俺も仕事帰りでヘトヘトだったから、席に腰を落ち着けてスマホで推しのライブ動画でも見ようと思ったんだ。でも、その日は違った。車両の端っこで、...
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#027 魔法道具屋の厄介な仕事

ガタが来ている店の扉がきしみ、ドアベルが鳴った。入ってきたのは、背の高い男だ。外套のフードを目深に被り、顔はほとんど見えない。でも、感じるんだよ、ただの人間じゃないってことを。「ここは、魔法道具をなんでも直せる店だと聞いた」低い声でそう言わ...
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#026 中山道の旅

「おい、そこの若者!」と呼び止められたのは、中山道の宿場を抜けて少しした頃だった。振り向くと、一人の侍風の男が立っていた。いや、侍風というのも妙な表現だが、何せその格好が奇妙だったのだ。立派な刀を腰に差しているものの、着物は古びて裾がほつれ...
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#025 地下迷宮の囁き

あの日、雨が降っていたんです。急に降ってきたんで、あわてて入った駅の地下街に入ったんですよ。普通に雑貨屋とか服屋やカフェが並んでいる本当にごく普通の地下街だったんです。雨がやむまでちょっとゆっくりしちゃおうかなって思って、あまり土地勘はなか...
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#024 見知らぬ守護霊

最初に違和感に気づいたのは朝顔を洗っていたときだった。鏡の中の自分の肩の辺りの空間が薄ぼんやりとにじんでいる。鏡が汚れているのかと思ったが、そのにじみは自分の動きにぴったりとついてくる。よくわからなかったが、たいしたことでもないので気にしな...
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#023 瞳をとじて

昨夜は気の置けない友人たちと宅飲み鍋パーティだった。しかし気がつけばソファで寝ていて、僕の顔には見事なまでの「芸術」が施されている。左頬にはへのへのもへじの何やら卑猥なマーク。右頬には萌え絵風の女の子。おでこには「休暇中」と大きく書かれてい...
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#022 新法

ええ? 異常がないってどういうこと?? 頭痛がするんだよ、先生。えむあーる、何? もっと詳しい検査をするってこと? いやでもそういうのって高いんでしょ。病院は金儲けばっかり考えてすぐそういうこというからヤになるよ。今日もようやく仕事抜けて来...