ちいさな物語 #087 祖母のわらび餅 夏になると祖母が手作りのわらび餅を作ってくれた。冷たい井戸水で締めたそれは、ぷるんと透き通り、きなこと黒蜜がたっぷりかかっていた。口に入れると、まるで澄んだ水のかたまりのように清らかな味がする。「おばあちゃんのわらび餅って、なんだか夢みたい... 2025.02.28 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #086 わたしを知っていますか その日、僕は大きなスクランブル交差点にいた。青信号に変わると、群衆が一斉に動き出す。まるで波のように人が押し寄せ、すれ違い、散らばっていく。そんな中、僕はふと足を止めた。向こう側から歩いてくる一人の女性と目が合ったのだ。一瞬、時間が止まる。... 2025.02.28 ちいさな物語恋愛
ちいさな物語 #085 11時43分 このマンションに引っ越してきて、一ヶ月が経つ。仕事にも慣れ、夜は静かに過ごせるかと思っていた。だが、あることが気になっている。——毎晩、天井から音がするのだ。最初は気にしなかった。マンションなら生活音が響くのは仕方がない。だが、不思議なこと... 2025.02.27 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #084 生活実態調査の実態 ある日、俺のスマホに一通のアンケート結果が届いた。「全国100万人が答えた生活実態調査」なんとなく興味が湧き、結果を眺めてみる。すると、開いた瞬間、思わず「は?」と声を漏らした。——「朝食にワニの肉を食べる人、78%」嘘だろ? そんなものス... 2025.02.27 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #083 廃駅の階段 聞いてくれ、俺はただの階段だ。だけど、俺が見た光景を話したら、きっとお前も興味を持つだろう。この廃駅には、いろんな人間が来るんだ。俺はもう使われなくなった駅の階段。錆びた手すりに苔むした段、それが俺の全てだ。何十年も前に列車が通らなくなって... 2025.02.26 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #082 究極のピザ 「いや、だからパイナップルはピザに合わないんだって!」「お前の方こそ、アンチョビの塩辛さを理解してない!」僕とルームメイトのケンは、ピザのトッピングについて激しく口論していた。もともとは仲のいい大学の同級生だったのに、この問題に関してだけは... 2025.02.26 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #081 転がってゆく先 俺か? 俺はただの空き缶さ。最初はちゃんとした飲み物だった。工場で作られ、店に並び、人間に買われ、そして——飲まれた。そこまではまあ、よくある話だ。問題はその後だ。飲み終わった俺は、ポイッと道端に投げ捨てられてしまった。ガードレールにぶつか... 2025.02.25 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #080 死神の鳥 最初に気づいたのは、駅のホームだった。目の前のサラリーマンの頭に、小さな黒い鳥が止まっていた。カラスのように見えるが、もう少し小さい。それにどこか質感が、違う。まるで影が形を成したような、ふわふわとした不確かな存在だった。周囲の人々は誰も気... 2025.02.25 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #079 乙女ゲーム化した高校生活にモブの俺がツッコミ入れていきますね 「いやいや、ありえないだろ」俺は隣の席で繰り広げられる光景に、思わずツッコミを入れた。ここはごく普通の高校。そしてこの物語のヒロイン——橘ひまりは、決して”かわいい”タイプではない。見た目は普通、性格はどちらかというと生意気。気分屋の猫みた... 2025.02.24 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #078 行列の先にあるもの その日、俺は仕事帰りに駅前の広場を通った。いつもなら通り過ぎるだけの場所なのに、今日は何かがおかしかった。――行列だ。ものすごく長い行列ができている。最初は人気のスイーツでも売っているのかと思った。でも、列に並んでいる人たちはみんなスマホを... 2025.02.24 ちいさな物語変な話