ちいさな物語 #306 フェイス・オフ ある晩、私が帰宅すると郵便受けに奇妙な小包が届いていた。差出人は見知らぬ名前。送り状には「人生を変えるチャンスをあなたに」とだけ書いてある。通販か、新手の詐欺だろうか。私は疑いつつも、中身が気になって仕方なく、小包を開けてみた。中には小さな... 2025.06.30 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #305 視えぬ男 霊能者・桐山一郎はその名を全国に轟かせていた。迷える人々に救いの言葉を与え、霊を視る能力を持つと言われていた。予約は数年先までいっぱいになり、それでも相談したいという者が後を絶たなかった。「あなたの背後に憑いている女性の霊ですね。彼女は寂し... 2025.06.30 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #304 地底湖の夢 きみは、地底湖って聞いたことあるかい?いや、ただの地下水や洞窟の湖じゃないんだ。本当に「誰も知らない地底の湖」の話さ。これは、ずいぶん昔、ぼくの伯父が地下鉄工事の現場で体験した出来事なんだ。もう時効だろうって話してくれた。そのころ、都会の真... 2025.06.27 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #303 姫、魔王城に留学する 「魔王様、私、ここで勉強したいんです」魔王城の玉座の間で、姫はにこやかな表情で魔王に入学願書を差し出した。「勉強だと? ここは学び舎ではないぞ」魔王は困惑して角の生えた頭を掻いた。そもそも姫は人質として攫ってきた存在である。泣いて救出を待つ... 2025.06.27 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #302 龍の谷 昔々、とある山奥に小さな村がありました。その村の近くには深い谷があり、そこには龍が棲むと言われておりました。村人たちは昔から、その龍の怒りを鎮めるために若い娘を谷に捧げる風習がありました。「龍の怒りに触れてはならぬ」と、年寄りは口々に言い、... 2025.06.26 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #301 夏祭りの後 夏祭りは毎年家族で行く恒例の行事だった。兄と私は浴衣を着て、母と三人で神社の境内に向かう。兄は射的が得意で、いつも私の分まで景品を取ってくれる優しい人だった。けれどその夜は、兄の様子が少し違っていた。神社の境内は大勢の人で賑わっていた。屋台... 2025.06.26 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #300 百年茶のひととき 古びた骨董店で、趣深い茶器を見つけた。棗(なつめ)、いや、茶入れと呼ぶのか。持ち上げてみると中身が入っているような様子だった。「これ、中はどうなっているんですか?」店主はかなり高齢で、茶器を見ると不思議なものを見るように目を丸くした。「おや... 2025.06.25 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #299 色のある場所 そのチラシを最初に見たのは駅前だった。何気なく拾ったそれが、まさかこんなことになるなんて、あのときの自分は思いもしなかったんだ。拾い上げてみると、「あなたの求める答えがここにあります」という一文と、下部に手書きで書かれた住所だけ。それ以外の... 2025.06.25 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #298 赤いコートの訪問者 「これ、ほんとに私が体験した話なんですよ。いや、信じてもらえないかもしれませんけどね、あの夜のことは今でも鮮明に覚えてるんです。」その日は夜勤でした。深夜2時を過ぎた頃、ナースステーションの窓をぼんやりと拭きながら外を見下ろしたんです。する... 2025.06.24 ちいさな物語怖い話
SF #297 逃げるマウスの秘密 「あれ?カーソルが……」深夜を過ぎた頃、僕はデスクに向かい、ふと画面に目をやった。すると、画面上のカーソルが、誰も触れていないはずのマウスに合わせて、突然ひとりでに動き始めたのだ。カーソルは不規則に震え、ゆっくりと画面の隅まで滑っていく。そ... 2025.06.24 ちいさな物語SF