SF #354 氷の奥で眠るもの その氷層は、南極の無人地帯にひっそりと眠っていた。調査隊が偶然に掘り当てた、地表から深さ約百二十メートルの地下空間。気温は常に氷点下八十度を下回り、人が簡単に足を踏み入れることを許さない場所だった。調査隊のベテランたちは、その地下空間の存在... 2025.07.31 ちいさな物語SF
ちいさな物語 353 魔法少女(35) 「もう25年かぁ……」鏡の前でぼんやりと呟きながら、私はふと自分の顔を見た。10歳で魔法少女としてデビューして以来、悪の組織から地球を守るために必死に戦い続けてきたけど、気がつけば35歳。「少女」という言葉に明らかに無理を感じられる年齢に差... 2025.07.31 ちいさな物語不思議な話
SF #352 忘れられたロボット 宇宙の片隅に、ひっそりと漂う古い宇宙ステーションがあった。そこにはたった1台のロボットが、長い時間をひとりで過ごしていた。ロボットの名はエル。人類が宇宙に進出し始めた頃に作られた、初期型の人工知能搭載ロボットだった。エルには重要な任務があっ... 2025.07.30 ちいさな物語SF
ちいさな物語 #351 記憶のスープ 閉店間際の店に、ずぶ濡れの男が飛び込んできたんだ。ボロボロのスーツなのに妙に穏やかな笑み――あんな客、初めてだったよ。その日は特に客足も少なく、雨も強くなってきたから、早めに店を閉めようと思って、外の看板を片付けようとしたその時だった。ガラ... 2025.07.30 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #350 今日も勇者が現れない 「魔王が復活したのに、勇者が見つからない」国王が溜息混じりに告げる言葉に、魔法使いである俺は思わず頭を抱えた。いや、それにしたって、なんで俺が行く流れになってるんだ?「申し訳ない、セオドア殿。しかし、頼めるのはそなたしかおらぬ」国王は苦々し... 2025.07.29 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #349 恋愛マスターの真実 「恋愛ってのはさ、駆け引きがすべてなんだよ」また始まった。友人同士で恋愛話に花を咲かせていると、必ずどこからともなく割り込んでくる男、篠原。自称・恋愛マスターの彼は、毎度のごとく偉そうな口調で恋愛を語り出すのだが、友人の誰もまともに耳を傾け... 2025.07.29 ちいさな物語恋愛
SF #348 不幸を願う幸福の手紙 その奇妙な「不幸の手紙」は、ある朝、突然僕のスマホに届いた。送り主の名前はない。ただシンプルなメッセージが表示されているだけだった。『この手紙を7人に送らないと、あなたに小さな不幸が訪れます』僕は鼻で笑った。こんな時代に不幸の手紙なんて、古... 2025.07.28 ちいさな物語SF
ちいさな物語 #347 人類みんな変人化計画 ある朝、世界中のAIが突然嘘をつき始めた。スマホのアシスタントAI、ナビゲーションシステム、チャットボット……。ありとあらゆる人工知能が、口をそろえて奇妙でシュールな嘘を人々に吹き込み始めたのだ。「本日、地球は楕円形になりました。バランスを... 2025.07.28 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #346 扉の向こう側 その扉は、昨日までは確かにそこにあった。学校帰りの路地裏、雑居ビルの影に隠れるようにして、古ぼけたレンガの壁面に場違いなほど鮮やかな緑色の扉が存在していたのだ。「あれ、こんなのあったっけ?」最初にその扉に気づいたのは夏樹だった。夏樹は好奇心... 2025.07.27 ちいさな物語不思議な話
SF #345 最後のジョーク その日、朝から奇妙なニュースが流れていた。科学者たちが巨大な隕石が地球に衝突すると断言したのだ。どのテレビ局も『残り24時間』というタイマーを画面の端に表示し、街は緊張に包まれる――はずだった。しかし、実際には奇妙なことが起きていた。街頭に... 2025.07.27 ちいさな物語SF