ちいさな物語 #333 不条理百貨店へようこそ いつの間にか、その百貨店に足を踏み入れていた。目の前には巨大な吹き抜けが広がり、華やかな照明と軽やかな音楽が流れている。しかし、不思議なことに、入り口を通った記憶がまったくなかった。もしかしてこれは夢か?受付に立っていた店員に、ここがどんな... 2025.07.18 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #332 桜憑き 満開の桜並木をぼんやりと眺めていた。風に吹かれ、花びらがひらひらと舞う姿が美しい。「綺麗だな……」呟きながら目を細めていたら、強い風が吹きつけてきて、思わず目を閉じた。次の瞬間、奇妙な感覚に襲われた。体が軽く、小さくなったような気がする。ゆ... 2025.07.17 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #331 隣の子供 新しく引っ越したアパートは、築年数こそ古いが部屋も綺麗で家賃も安かった。駅からも近く、周辺環境も申し分ない。「掘り出し物だな」そう思って喜んでいたのも束の間だった。引っ越して数日後、夜遅く仕事から帰り、ベッドに横たわった時のことだ。隣の部屋... 2025.07.17 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #330 迷宮のうた 目を開けると、石の天井があった。ひんやりとした空気と、かすかに漂う鉄と苔の匂い。私は、なぜここにいるのかも思い出せないまま、立ち上がった。四方を囲むのは、重厚な石の壁。奥へと続く一本の通路があり、私は迷うことなくそこを歩き出した。歩き続ける... 2025.07.16 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #329 名探偵アリスと見えない助手 名探偵として知られるアリス・サヴォイは、普段の喧騒とは無縁の田舎の一軒家で休日を過ごしていた。事件に追われる日常を忘れるため、彼女は静寂の中に身を置くことを好んだ。だが、この静けさは彼女にとって完全な孤独ではなかった。なぜなら、彼女には「助... 2025.07.16 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #328 怪談の食卓 その街の路地裏には、看板のない小さな食堂があるという。この食堂の主人は、『怪談ハンター』と呼ばれる奇妙な男だ。「お客さん、怖い話はお好きですか?」店主は、訪れた客にいつもそんなふうに問いかけるらしい。――ある蒸し暑い夏の日、私は偶然その食堂... 2025.07.15 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #327 赤いラインの傘 昨日の夕方のことだ。ちょっと急いでいて、コンビニの傘立てに置いておいた自分の黒い傘を慌てて掴んで帰ったんだ。家に着いて玄関で傘を開いて確かめてみて驚いたよ。僕の傘じゃなくて、よく似た赤いラインが入ったものだったんだ。「やっちゃったな」と思っ... 2025.07.15 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #326 最後のプレイヤー 「世界を賭けたカードゲームだよ」気がついたとき、僕は見知らぬ部屋にいた。薄暗い天井からぶら下がる裸電球が、テーブルの上に鈍い光を落としている。向かいには三人の男が座っていた。テーブルには古びたカードが並び、そのどれもが長い年月そのもののよう... 2025.07.14 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #325 森の宴 森の奥で迷ったとき、遠くから楽しげな音楽が聞こえてきました。導かれるように進むと、そこには奇妙な光景が広がっていました。私はその日、特に目的もなく森を訪れただけでした。あえて言うなら、ただ日常から逃げたかったのです。しかしどこかで道を間違え... 2025.07.14 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #324 幽霊の相手をするおじさんの話 「あの古びた商店街で見かけるおじさん、なんか普通じゃない気がしてさ。聞いてみたら、幽霊の相手が仕事だって言うんだよ」俺が大学生だった頃、地元に帰るたびに通る商店街があったんだ。昼間でも人通りが少なくて、どこか寂れた感じの場所だった。そこの片... 2025.07.10 ちいさな物語不思議な話