月曜日の朝、吉田は重い体を引きずるようにしてオフィスに向かった。週末は一瞬で過ぎ去り、気づけば始まる憂鬱な1週間。今週もまた、終わりの見えない残業と上司の叱責が待っているに違いない。
「これがまだまだ続くのか……」
まだ二十代の吉田にとって先は長い。エレベーターに乗り込むと、いつもの同僚たちが沈んだ顔で立っていた。しかし、ふと違和感に気づく。彼らの表情がどれも妙に無表情で、目は虚ろだった。月曜日とはいえ異常である。
「おはようございます……」
吉田が声をかけると、一瞬の間を置いて全員がゆっくりと彼を見た。そして、全員が同時に、機械のような調子で「おはよう」と返してきた。その異様さに背筋が寒くなる。この週末に何が起こったのだ。
奥へ進むとさらに奇妙な光景が広がっていた。パソコンの前に座る社員たちは一心不乱にキーボードを叩いているが、その動きは全く同じリズムで、まるでプログラムされた機械のようだった。
「なんだこれ?」
吉田は慌てて上司の席へ向かった。しかし、上司もまた同じ無表情で、書類を延々と同じ動作で整理している。整理しているはずなのに同じ動作を繰り返しているだけで何一つ整理できていない。まるでおもちゃのドリンキングバードだ。
「これはどうなってるんですか?」吉田が問いかけても、誰からも返事がない。ただ、一瞬だけ上司の口元がわずかに動いた。
「月曜日は……終わらない……」
その言葉の意味を理解する前に、吉田の視界が突然暗くなった。そして次に目を覚ましたとき、彼はデスクに座り、キーボードを叩いていた。同僚たちと同じリズムで。
時計を見ると、まだ午前8時40分。会社に着いた時刻である。いつもの月曜日のはずなのに、どれだけ経っても時計は進まず、終業はベルが鳴らない。
何時間経っても、何日経っても、永遠に「月曜日」は続いていた――。
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