ちいさな物語 #025 地下迷宮の囁き あの日、雨が降っていたんです。急に降ってきたんで、あわてて入った駅の地下街に入ったんですよ。普通に雑貨屋とか服屋やカフェが並んでいる本当にごく普通の地下街だったんです。雨がやむまでちょっとゆっくりしちゃおうかなって思って、あまり土地勘はなか... 2025.01.28 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #024 見知らぬ守護霊 最初に違和感に気づいたのは朝顔を洗っていたときだった。鏡の中の自分の肩の辺りの空間が薄ぼんやりとにじんでいる。鏡が汚れているのかと思ったが、そのにじみは自分の動きにぴったりとついてくる。よくわからなかったが、たいしたことでもないので気にしな... 2025.01.28 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #023 瞳をとじて 昨夜は気の置けない友人たちと宅飲み鍋パーティだった。しかし気がつけばソファで寝ていて、僕の顔には見事なまでの「芸術」が施されている。左頬にはへのへのもへじの何やら卑猥なマーク。右頬には萌え絵風の女の子。おでこには「休暇中」と大きく書かれてい... 2025.01.27 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #022 新法 ええ? 異常がないってどういうこと?? 頭痛がするんだよ、先生。えむあーる、何? もっと詳しい検査をするってこと? いやでもそういうのって高いんでしょ。病院は金儲けばっかり考えてすぐそういうこというからヤになるよ。今日もようやく仕事抜けて来... 2025.01.27 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #021 王様の遊び 王の奇妙な遊びが始まったのは、彼が即位して間もない頃だった。ある日突然、「民の暮らしを学ぶ」と言って城を出て行き、ボロボロの服をまとい市井を歩き回るようになった。家臣たちは「気分転換でしょう」と笑っていたが、王は次第にその遊びに没頭していっ... 2025.01.26 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #020 終わらない一日 この繰り返しが始まったのはいつからだろう。私はもう何度も、同じ一日を体験している。この日は私にとって人生最悪の日だ。大切な人を失うという、耐え難い悲劇の日。その朝、彼女と最後の口論をしたのを覚えている。くだらないことで言い争いになり、彼女は... 2025.01.26 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #019 薔薇色の嘘 片田舎に佇む古びた屋敷に住むお嬢様、クラリッサは、目が見えない。彼女の目は開いているが、光も色も感じることができない。それでも、彼女の世界は鮮やかだった。執事のアルフレッドが、彼女に毎日「景色」を語ってくれるからだ。「今日は曇り空です。灰色... 2025.01.25 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #018 手のひらの宇宙 一人暮らしが味気なくて、何となくペットショップに立ち寄った。動物を飼うつもりはなかったが、動物と暮らす自分を想像をしてみてもいいかもしれないとふと思ったのだ。そこで出会ったのは、少し変わった模様のハムスターだった。背中に広がる斑点は、まるで... 2025.01.25 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #017 侍がいる あれは3年前の秋の夜だった。残業帰りの深夜、駅前の自販機でコーヒーを買ってたんだ。ふと振り返ると、そこにいたのが、着流し姿の男だった。いや、普通の着流しじゃない。腰に刀を差して、髷を結った、まさに時代劇から飛び出してきたみたいな侍だ。俺は一... 2025.01.24 ちいさな物語不思議な話
SF #016 新米時空警察の大失敗 あの日、僕は時空警察の新人で、時空観測室のモニター番を任されていました。先輩たちはみんな出動中で、僕一人だけ。そんな時に限って、異常が発生するんですよね。モニターに映ったのは、紀元前300年頃のギリシャ。大哲学者アリストテレスが街角で何やら... 2025.01.24 ちいさな物語SF