ちいさな物語 #395 とある記者の取材記録 俺は記者だ。剣士でも魔術師でもなく、ただペンを取り文章を書くことを生業にしている。要するに「事実を取材し、人々に伝える」のが仕事だ。勇者のように剣を振るう気もなければ、王に仕える気もない。俺が欲しいのは、ただ「よい記事のネタ」だけだ。今回の... 2025.08.30 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #394 月影の庵 山には不思議な話がつきものでございます。中でも「月影の庵」の噂は、古くから村人たちの口の端に上り、子や孫へと語り継がれてまいりました。ある夜のこと。若い猟師の庄五郎が山で道に迷ったそうです。谷を越え、崖をよじ登るうちに日はすっかり落ち、辺り... 2025.08.29 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #393 ストリート茶会! 粋がいきすぎる壮絶バトル その夜、路地裏に円陣ができた。ラップバトルのサイファーよろしく、だがそこに並ぶのはマイクでもターンテーブルでもない。ゴザ、水指、そして風炉――茶道で夏に使われる炉である。ストリート茶会は唐突に始まる。掛け声ひとつなく、最初に一歩踏み出したの... 2025.08.29 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #392 都市伝説を考える会 先週の金曜、友人に妙な会合に連れて行かれた。名前は「都市伝説を考える会」。聞いただけで胡散臭いだろう?薄暗い喫茶店の二階に十人ほど集まっていて、皆が輪になって話していた。年齢も職業もバラバラ。スーツ姿の中年、フリーター風の若者、妙に落ち着い... 2025.08.28 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #391 宝石の森 森の奥深く、人の足がほとんど入らぬ場所に、奇妙な噂がある。木々の葉も枝も幹も、すべてが宝石でできた森があるというのだ。宝石の森――そう呼ばれていた。 それは、かつて旅の商人から聞いた話だった。最初は笑い飛ばした。宝石の森などあるものかと。だ... 2025.08.28 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #390 ソロキャンプの怪 動画配信者のKは、最近急激に人気を伸ばしていた。彼のスタイルはソロキャンプの生配信。焚き火を起こし、料理を作り、視聴者のコメントに答えながら一日を過ごすというだけのシンプルなものだ。「はいどうも、今日は山奥の渓谷沿いでソロキャンでーす」カメ... 2025.08.27 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #389 親ガチャアプリ 「笑った。マジであるんだ、こういうの」僕はその夜、画面を見ながら思わず声を漏らした。スマホにインストールされたばかりのアプリ。その名も――〈親ガチャ〉。SNSで誰かが冗談半分に貼ったリンクを踏んだのが始まりだった。普通なら怪しい広告か詐欺サ... 2025.08.27 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #388 最後の盆踊りの夜に これから話すのは、ほんの少し昔、僕が小学五年生だった夏休みの最後の夜の出来事なんだ。田舎の小さな村だから、毎年盆踊り大会が開かれるんだけど、今年もその日がやってきた。夏休みの終わりに合わせて行われるから、僕ら子供にとっては夏のフィナーレだ。... 2025.08.26 ちいさな物語不思議な話
SF #387 二つ目の地球 コールドスリープ――それを聞いたとき、僕は未来の神話みたいに思った。数百年に及ぶ宇宙航行の間、冬眠のように眠り、目的地に着いたら目覚める。そんな技術がなければ、人類は太陽系の外に出ることなど不可能だった。そして今、僕はその実験航行のクルーの... 2025.08.26 ちいさな物語SF
ちいさな物語 #386 変な新聞記事 何年か前のことだが、地方紙に載った小さな記事が、妙に記憶に残っているんだ。――以下、記事のスクラップブックから抜粋する。近隣住民同士の口論、原因は「プリン」をめぐる主張の相違八月十八日午前八時ごろ、市内在住のパート従業員Aさん(42)とパー... 2025.08.25 ちいさな物語変な話