ちいさな物語 #448 刺身の旅 あれは、忘れもしない晩酌の夜のことだ。スーパーで買ったパックの刺身を皿に並べて、醤油を用意し、さあ一口……と箸を伸ばした瞬間、声がした。「まだだ。まだ食うな」僕は手を止めた。部屋には僕ひとり。だが声は確かに聞こえた。「ここだ、ここだよ。お前... 2025.09.27 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #447 街灯の下の影 あれは俺が夜勤に向かうために歩いていたときのことです。街灯って、日が暮れて空が暗くなると自動で点きますよね。あの瞬間にね、妙なものを見てしまったんですよ。ある日の夕方、駅への細い道を歩いていたんです。商店街から外れた裏通りで、人通りはほとん... 2025.09.27 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #446 セルフ化社会 あんたは最近「セルフ〇〇」ってやつをよく聞くと思わないか?セルフレジ、セルフ脱毛、QRコードでセルフ注文するカフェ……最初はその程度だった。人件費削減だの効率化だの言われて、「自分でやる方が早い」って便利がられていた。でもな、気がついたら街... 2025.09.26 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #445 飢えの名前 あんたにも経験はあるんじゃないか?夜中にふと、ラーメンが食べたくて仕方なくなるとか、やけに甘いものを欲するとか。誰にでもあるんじゃないかと思う。これはただの気まぐれみたいなものだと思うだろう。でもな、俺の場合はちょっと違ったんだ。最初は小さ... 2025.09.26 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #444 戻らない交渉人たち あれは今でも夢に見る出来事です。ある日、街の雑居ビルで立て籠もり事件が起きました。銃を持った男が部屋に閉じこもり、人質を取っているという。僕は交渉人ではなく、ただの警察官でしたが、現場に動員されていました。最初に向かったのは、ベテランの交渉... 2025.09.25 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #443 呪屋繁盛記 あんた、呪屋って知ってるかい?そう、最近はやたら耳にするだろ。アニメや漫画の影響で、若いやつらの間じゃちょっとしたブームになってんだ。実は俺、その呪屋をやってるんだよ。元々は細々とした商売でね、頼みに来るのは本当に切羽詰まった人間ばかりだっ... 2025.09.25 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #442 異世界ニートの変わらぬ日々 あのとき確かに僕は死んだんです。過労死とかじゃなく、ただ家の階段を踏み外して頭を打った。ニュースにもならないような凡庸な死に方でした。そして気づけば光の中にいて、「あなたを異世界に転生させます」という声を聞いたんです。「よし来た!ついに僕の... 2025.09.24 ちいさな物語異世界の話
ちいさな物語 #441 隣人たち 不思議なことが起きたのは、僕がこのアパートに引っ越してきてからすぐのことでした。隣の部屋の住人が、毎日違う人になっているんです。初日は若いサラリーマン風の男でした。挨拶を交わしたときは感じのいい人で、「こちらこそよろしくお願いします」と笑っ... 2025.09.24 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #440 隕石パニック24時 「緊急ニュースです。大きな隕石が地球に衝突します」その一言で世界はひっくり返った。いや、ひっくり返るどころか、激しく転がり始めた。残り時間は24時間。こんなことある? こういうのはもっと前にわかるもんじゃないの?人類最後の一日は、完全にカオ... 2025.09.23 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #439 不思議なカプセル 最初にそのガチャガチャを見つけたのは、廃れたショッピングモールの一角だった。他の店はとっくに閉まり、テナント募集の張り紙が並ぶ中、ぽつんと置かれた一台の機械。赤と青の色はすっかり褪せて、透明のケースも黄ばんでいた。暇つぶしに百円玉を入れてハ... 2025.09.23 ちいさな物語怖い話