ちいさな物語

#463 人気居酒屋の凋落

うちの居酒屋「いろは」は、三年前までは本当に人気店だった。駅前から少し離れた裏通りにある小さな店なのに、連日満席。店長の料理の腕が良いのはもちろん、どの客にもフレンドリーに話しかける人柄も評判だった。でも、なぜか客足が減っていった。常連客が...
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#462 宇宙人たちの侵略会議

あれは、数年前のことだ。正直、信じてもらえるとは思っていない。けれど、僕はあの日、本当に「宇宙人の侵略会議」を聞いてしまったんだ。その晩、僕は会社の帰り道、公園のベンチに腰を下ろしてコンビニで買ったコーラを飲んでいた。一人でこうやってくつろ...
ちいさな物語

#461 商店街サバイバルゲーム

俺たちの商店街で「サバイバルゲーム」が始まったのは、文房具店のカミさんが言い出したのがきっかけだった。「そんな喧嘩するくらいなら、いっそゲームで決めちまいな」実はうちの商店街は最近派閥争いが激化していた。二つに割れた派閥――若手派と古参派。...
ちいさな物語

#460 無人島の光るラーメン

船が嵐に呑まれたのは、確か夜明け前のことだった。暗闇の中、船体が裂けるような音を立て、僕は波に放り出された。気がつけば無人島の浜辺に打ち上げられていた。傷だらけの体と、骨の髄まで染み込んだ疲労。多くはないサバイバル知識で数日はなんとか少ない...
ちいさな物語

#459 スクランブル交差点のハイタッチ

聞いてくれ。渋谷スクランブル交差点で、最近とんでもない現象が起きてるんだ。俺が最初に見たのは金曜の夜だった。人混みの中、サラリーマンが突然すれ違いざまに若者とハイタッチしたんだよ。「パァン!」っていい音立ててな。で、二人とも満面の笑み。「え...
SF

#458 UFOを呼べ!

あのときの宿題は、今でも忘れられない。中学二年の夏休み明け、理科担当の変人教師、藤巻先生が言ったんだ。「次回の宿題は――UFOを呼んでくること!」クラス中が爆笑したよ。「先生またふざけてる!」って。だけど、先生は本気の顔をしていた。「宇宙は...
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#457 傘に落ちるもの

あれは二年前の秋頃だったと思う。夜勤明けで疲れていた俺は、しとしとと降る雨の中を、傘を差して歩いて帰っていたんだ。最初は、雨音に紛れて気のせいだと思っていたが、上から「ボタッ」という重たい音がした気がした。雨の粒が落ちる音とは違う。柔らかく...
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#456 変わらぬ先生

うちの担任のことを話そうか。ぱっと見は二十代後半、生徒にも人気の若い先生だ。笑顔も明るく、授業もわかりやすい。女子は「イケメン」って騒ぎ、男子も気さくに話せる。まあ、完璧すぎるくらいの先生なんだよ。だけどある日、高齢の先生にぽろっと言われた...
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#455 コスプレ異世界転生記

いや、聞いてくれよ。俺さ、まさか本当に異世界転生するとは思ってなかったんだ。トラックに轢かれて気づいたら光に包まれて、あのベタな展開だ。「次に目を覚ましたら魔法と剣の世界で無双するんだろうな」って、頭の片隅で期待してたよ。――で、目を開けた...
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#454 超能力探偵の秘密

僕は名探偵の助手をしている。名前は伏せるけど、うちの探偵は業界でもそこそこ名が知られていて、依頼が絶えない。新聞やテレビにも取り上げられるくらいだから、まあ世間的には「名探偵様」ってことになってる。確かに頭はいい。知識量も豊富だし、観察眼も...