#004 密林研修

ちいさな物語

会社の研修で訪れたアマゾンの密林。研修担当者は笑顔で言った。「これから君たちには、自己成長のためのサバイバルを体験してもらう!」

社員たちは軽いアウトドア体験だと思い込んでいた。だが、案内されたキャンプ地には食糧も水もなく、社用のノートパソコンだけが支給されていた。

「まずさまざまな困難を乗り越え、課題を提出してください。課題は社内システムから入手できます。社内システム、検索スキルを使いこなすことも課題の一部となります。期限は明日の朝9時です。」

研修担当者はそう告げると、ヘリコプターで去っていった。

謎の鳥が叫び、謎の獣の遠吠えが響く中、社員たちは怯えながらもパソコンに向かった。協力して水場を探し、食べられそうな草を食い、火を焚いて虫を追い払った。しかし、腹を下すもの、パソコンの電池が尽きる者、ヘビに噛まれて紫色になっている者、小用に出て戻らない者が続出。そもそもパソコンが使えない者もいた。
翌朝までに解答を提出できた者はわずか数人だった。

「おめでとうございます。皆さんは次のステージへ進む資格を得ました。」

(次のステージ?)

全員が顔を見合わせる。

その瞬間、課題未完了の者たちは黒い影により一瞬で密林の闇へと引きずりこまれた。脱落者の悲鳴が暗闇の奥から聞こえる。残された者もぞっと身をふるわせた。

「さあ、次の課題はいよいよ実務経験に関わるものです。取引先の依頼に従い納品までをこなしてください。納期は絶対厳守です!」

研修担当者の笑顔は昨日と変わっていなかった。

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