不思議な話

ちいさな物語

#474 トンネルの中

その子に出会ったのは、本当に偶然だった。あの日、僕は出張帰りで、地方のローカル線の無人駅に降りた。帰りのバスまで時間があって、少し散歩でもしようと駅前の坂道を登っていたときだ。人通りなんてまったくない。途中の古びた案内板には、「隣町へ通じる...
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#469 私は神様

最初にその地図を描いたのは、退屈な授業中だった。私はノートの端に自分だけの地図を描いて遊んでいた。丸い半島、曲がりくねった川、中央に大きな山脈。なんとなく名前もつけた。「レムリア大陸」。それはその時間だけの遊びのはずだった。でも、次の日、ノ...
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#464 神様の同居人

ある日、道端でボロボロの男を拾った。彼は「神だ」と名乗った。最初は信じなかったが、彼が見せた小さな奇跡を見てしまった。その日から、俺の家に神様が住みついた。やがて、彼はこの世界に再び“祈り”を取り戻していく。(文字数:)「#464 神様の同...
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#462 宇宙人たちの侵略会議

あれは、数年前のことだ。正直、信じてもらえるとは思っていない。けれど、僕はあの日、本当に「宇宙人の侵略会議」を聞いてしまったんだ。その晩、僕は会社の帰り道、公園のベンチに腰を下ろしてコンビニで買ったコーラを飲んでいた。一人でこうやってくつろ...
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#460 無人島の光るラーメン

船が嵐に呑まれたのは、確か夜明け前のことだった。暗闇の中、船体が裂けるような音を立て、僕は波に放り出された。気がつけば無人島の浜辺に打ち上げられていた。傷だらけの体と、骨の髄まで染み込んだ疲労。多くはないサバイバル知識で数日はなんとか少ない...
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#456 変わらぬ先生

うちの担任のことを話そうか。ぱっと見は二十代後半、生徒にも人気の若い先生だ。笑顔も明るく、授業もわかりやすい。女子は「イケメン」って騒ぎ、男子も気さくに話せる。まあ、完璧すぎるくらいの先生なんだよ。だけどある日、高齢の先生にぽろっと言われた...
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#454 超能力探偵の秘密

僕は名探偵の助手をしている。名前は伏せるけど、うちの探偵は業界でもそこそこ名が知られていて、依頼が絶えない。新聞やテレビにも取り上げられるくらいだから、まあ世間的には「名探偵様」ってことになってる。確かに頭はいい。知識量も豊富だし、観察眼も...
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#449 
懐かしい町

「懐かしい町」の話を聞いたことがあるか?地図にもSNSで検索しても出てこない。それなのに口伝で噂は広がっていて、誰かが必ず「ああ、聞いたことある」と頷く。けれど不思議なことに、詳しい情報は誰も語らないんだ。実は俺も、あの町に迷い込んだひとり...
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#447 街灯の下の影

あれは俺が夜勤に向かうために歩いていたときのことです。街灯って、日が暮れて空が暗くなると自動で点きますよね。あの瞬間にね、妙なものを見てしまったんですよ。ある日の夕方、駅への細い道を歩いていたんです。商店街から外れた裏通りで、人通りはほとん...
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#438 神様のお気に入り

それはある日の朝のことでした。目を覚ますと、枕元に白い封筒が置かれていたんです。僕は一人暮らしで、鍵もかけている。誰かが忍び込んだ気配もない。気味が悪く思いながら開けてみると、こう書かれていました。――おめでとうございます。あなたは「神様の...