ちいさな物語 #320 天使がうちに降りてきた 雲間から一筋の光が降りてきたとき、なんとなく予感があったんだ。「何かが始まるな」ってね。それは、いつもの昼下がりだった。空が急に暗くなったかと思ったら、雲の隙間からまばゆい光が差し込んできた。その光の中に、何かがいた。いや、誰かと言うべきか... 2025.07.08 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #314 地球防衛はベランダから その猫は急に現れたんだ。ベランダでふてぶてしく尻尾を振っているのを見つけたとき、最初はただの野良猫だと思った。だけど、目が合った瞬間、妙な感覚が走った。「おい。お前、聞いてるか?」猫が口を開いて言葉を発したとき、心臓が止まりそうになったよ。... 2025.07.04 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #313 扉の向こう、夕陽の果て 残業につぐ残業。しかし労働環境がブラックといわれると、そこがすごく曖昧だ。有給は頑張ればなんとか取れる。上司は厳しいが、ぎりぎり常識の範囲内。ただ、人手不足なのか、残った人員への仕事は日に日に増えていく。いっそ笑えるくらいのブラックな環境で... 2025.07.04 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #312 空のリモコン その朝、窓の外には青空が広がっていた。夜の間に雨が降っていたはずだが、地面は乾ききっていて、木々の葉もさらさらと風に鳴っている。広瀬尚人は、いつもより軽い足取りで階段を降り、テレビのリモコンを手に取った――が、実はそれはテレビのリモコンでは... 2025.07.03 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #309 鐘のない鐘楼 昔々、とある小さな村に、一つの大きな時計塔があった。村のどこからでも見えるその塔は、長い年月を刻み続け、村人たちの生活を支えていた。だが、この時計塔には奇妙な噂があった。「どれだけ階段を登っても、鐘楼にはたどり着けない」村人たちは子供の頃か... 2025.07.02 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #305 視えぬ男 霊能者・桐山一郎はその名を全国に轟かせていた。迷える人々に救いの言葉を与え、霊を視る能力を持つと言われていた。予約は数年先までいっぱいになり、それでも相談したいという者が後を絶たなかった。「あなたの背後に憑いている女性の霊ですね。彼女は寂し... 2025.06.30 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #304 地底湖の夢 きみは、地底湖って聞いたことあるかい?いや、ただの地下水や洞窟の湖じゃないんだ。本当に「誰も知らない地底の湖」の話さ。これは、ずいぶん昔、ぼくの伯父が地下鉄工事の現場で体験した出来事なんだ。もう時効だろうって話してくれた。そのころ、都会の真... 2025.06.27 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #302 龍の谷 昔々、とある山奥に小さな村がありました。その村の近くには深い谷があり、そこには龍が棲むと言われておりました。村人たちは昔から、その龍の怒りを鎮めるために若い娘を谷に捧げる風習がありました。「龍の怒りに触れてはならぬ」と、年寄りは口々に言い、... 2025.06.26 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #300 百年茶のひととき 古びた骨董店で、趣深い茶器を見つけた。棗(なつめ)、いや、茶入れと呼ぶのか。持ち上げてみると中身が入っているような様子だった。「これ、中はどうなっているんですか?」店主はかなり高齢で、茶器を見ると不思議なものを見るように目を丸くした。「おや... 2025.06.25 ちいさな物語不思議な話
ちいさな物語 #299 色のある場所 そのチラシを最初に見たのは駅前だった。何気なく拾ったそれが、まさかこんなことになるなんて、あのときの自分は思いもしなかったんだ。拾い上げてみると、「あなたの求める答えがここにあります」という一文と、下部に手書きで書かれた住所だけ。それ以外の... 2025.06.25 ちいさな物語不思議な話