怖い話

ちいさな物語

#444 戻らない交渉人たち

あれは今でも夢に見る出来事です。ある日、街の雑居ビルで立て籠もり事件が起きました。銃を持った男が部屋に閉じこもり、人質を取っているという。僕は交渉人ではなく、ただの警察官でしたが、現場に動員されていました。最初に向かったのは、ベテランの交渉...
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#443 呪屋繁盛記

あんた、呪屋って知ってるかい?そう、最近はやたら耳にするだろ。アニメや漫画の影響で、若いやつらの間じゃちょっとしたブームになってんだ。実は俺、その呪屋をやってるんだよ。元々は細々とした商売でね、頼みに来るのは本当に切羽詰まった人間ばかりだっ...
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#441 隣人たち

不思議なことが起きたのは、僕がこのアパートに引っ越してきてからすぐのことでした。隣の部屋の住人が、毎日違う人になっているんです。初日は若いサラリーマン風の男でした。挨拶を交わしたときは感じのいい人で、「こちらこそよろしくお願いします」と笑っ...
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#439 不思議なカプセル

最初にそのガチャガチャを見つけたのは、廃れたショッピングモールの一角だった。他の店はとっくに閉まり、テナント募集の張り紙が並ぶ中、ぽつんと置かれた一台の機械。赤と青の色はすっかり褪せて、透明のケースも黄ばんでいた。暇つぶしに百円玉を入れてハ...
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#437 耳の奥の声

あれは数年前のことです。通勤途中、いつものように電車で音楽を聴こうとイヤホンを耳に差し込んだ瞬間、不思議な声がしたんです。「……聞こえるか?」僕は思わずイヤホンを外しました。周囲を見渡しても、誰も僕に話しかけていない。車内は新聞を読む人やス...
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#427 ぼくの遠足

【9月25日】今日は先生が遠足のことをはなしてくれた。来月のはじめに行くんだって。行き先はまだひみつだけど「ふつうの場所じゃないからお楽しみに」と言ってた。どんなところだろう。ワクワクして、友だちと帰り道にずっとその話をした。【9月27日】...
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#426 笑いの迷宮

あれは、ほんの出来心だったんです。仕事帰りに見かけた細い路地にふと足を踏み入れました。その路地は他の道とは全然雰囲気が違ったんです。看板もなく、行き止まりのはずなのに、奥に暗いアーチのような入口が口を開けていたんです。まるで「入ってみろ」と...
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#425 盤上に消える

古びた喫茶店の片隅に置かれた知らないボードゲーム。遊んだ仲間の一人が、次のターンが来る前に姿を消した。ゲームは続き、盤上の駒は消えた友人の席を指し示す。恐怖と好奇心の板挟みのまま、残された者たちはダイスを振る手を止められなかった。(文字数:...
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#421 ウィジャボードの夜

大学二年の夏、僕は友人の洋平と美咲に誘われて、アパートの一室でウィジャボードをすることになった。夏休みだったのでちょっと怖い遊びをしてみたかったんだろう。ボードには文字や数字が並び、プランシェットを動かす遊びだということくらいは知っていたが...
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#417 深夜二時の無言電話

深夜二時、携帯の留守番電話に非通知の着信履歴が残っている。最初の1、2回は気にも留めなかった。「間違い電話だろう」そう思って履歴を削除した。だが、それは毎晩、同じ時刻に繰り返される。留守電も残っており再生してみると、録音されているのはただの...