変な話

ちいさな物語

#268 バカ発見装置

「あなたは、バカです」街中に置かれた奇妙な機械が、無情な声でそう告げた。それはある日突然、世界各地に現れた『バカ発見装置』だった。使い方は単純だ。装置に手をかざすだけで、その人が『バカ』か『無知』か判定される。最初は誰もが冗談半分だった。人...
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#267 パンツ大戦争、午前二時

深夜二時、町は眠っている。だが、眠っていない場所もある。たとえば、駅前のコンビニ。自動ドアが、ピローンと音を立てて開いた。「いらっしゃいませー」とレジの夜勤バイトの福与ふくよは、半分寝ているような声であくびをかみ殺した。店内は誰もいない。B...
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#265 呪殺、ついに違法化へ

長らく『呪殺』は違法ではなかった。それは単に『科学的に証明できない』という理由で、罪に問えないままだったからだ。それをいいことに呪術師たちは呪術を使っての暗殺や、痴話喧嘩レベルの簡単な報復を高額で請け負い、荒稼ぎをしていた。呪術師たちは表向...
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#264 役に立たない発明

街外れの古いレンガ造りの工房には、奇妙な発明家が住んでいた。彼の名はエミールという。見た目はまさに絵に描いたような『変人発明家』。髪はぼさぼさ、服はいつも油まみれだ。エミールの発明品といえば、例えば『くしゃみする靴』、『泣き出す時計』、『笑...
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#263 窓越しの隣人

僕のデスクは窓際で、隣のビルのオフィスがよく見える。こちらも向こうもガラス張りのオフィスだから、嫌でも互いの様子が目に入った。はじめはなんだかプライバシーが侵害されているようで、いい気分ではなかった。しかし、ある日の午後、ふと目を上げると、...
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#261 陰謀論カフェ

駅前の古びた雑居ビルの一階には、怪しいカフェがある。名前は「真実のカフェ」。マスターは口癖のように言った。「世界は陰謀で動いている!」いつも常連客たちはマスターの突拍子もない陰謀論を聞きながら、コーヒーを吹き出して爆笑するのが日課だ。例えば...
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#258 無限リバーシブル株式会社の謎

「おはようございます。リバーシブルでお願いします!」その日も、ぼくは元気に会社の自動ドアをくぐった。
無限リバーシブル株式会社に勤めて三年。だが、いまだに自分が何の仕事をしているのか説明できない。出社すると、エントランスには「表と裏、どちら...
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#253 深夜の回転寿司屋

「駅裏にある深夜の回転寿司屋は何か変らしい」そう噂を聞きつけた僕は、金曜の夜、興味本位で閉店後の回転寿司屋を見に行ってみた。なぜか明かりがついていて、自動ドアが開いたままになっている。そっと中をのぞくと、普通に営業しているかのように明るかっ...
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#250 そ

近所のコンビニが、今朝から「そ」の位置になっていた。何が「そ」なのか最初は誰にもわからなかった。ただ、朝、コンビニに行ってみると、入り口の自動ドアの前で、店員が全員、右手を耳の横に、左足を半歩前に出し、無言で「そ」としか言いようのないポーズ...
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#248 エレベーターのボタン全部押す係

夜のマンションには謎の「ボタン全部押す係」が現れるようだ。最上階から地下まで、全部の階を律儀に巡る彼(あるいは彼女)は、一体何者なのか? そして、住人たちはなぜか誰も驚かない――。 「また全部押されてる……」 エレベーターの扉が開くと、見慣...