変な話

ちいさな物語

#162 名探偵コーディネーター

世間には数多くの名探偵がいるが、彼らが活躍できるのは偶然ではない。実は私のような、探偵が活躍できるよう事件を演出する裏方「事件コーディネーター」が活躍しているからなのだ。探偵にも色々なタイプがいる。心理戦が得意な者、緻密な科学的捜査を好む者...
ちいさな物語

#142 ぶさいく犬の幸福論

あの日、ペットショップの片隅で一匹の犬と目が合った。いや、目が合ったというより、あまりにも気になって目が離せなかった。なにせその犬はとびきりブサイクだったのだ。鼻は潰れたように低く、目は変に離れている。耳も両方が変な方向に折れていて、足の長...
ちいさな物語

#138 芽吹く荷物

その荷物が届いたのは、雨の降る夕方だった。玄関の前に置かれた段ボール箱。宛名には僕の名前と住所が書かれていたが、差出人の欄はかすれて読めない。通販を頼んだ覚えはないが、もしかしたら家族の誰かが注文したものを仕送りとしてそのまま転送した、とか...
ちいさな物語

#134 失敗したテレポート

休日の朝、シャワーを浴びようと浴室の扉を開けると、浴槽の中に見知らぬ男の上半身があった。「すみません、失敗しちゃいまして」男は申し訳なさそうに笑い、軽く頭を下げた。「え、えっ? 誰ですか!?」私は驚いて後ずさったが、男は穏やかな声で続けた。...
ちいさな物語

#125 剛毛の生えてくる道

俺が毎日通る道には誰も通らない細い裏道がある。表通りを歩けばいいのに、わざわざそこを使うのは、なんとなくその雰囲気が好きだからだった。古びたレンガの壁が両側に立ち並び、湿った匂いが漂う。昼間でも少し薄暗く、まるで時間が止まったような場所。日...
ちいさな物語

#124 右手の暴走

きっかけは、中古屋で買った一本の万年筆だった。アンティーク風で格好良く、気に入って即購入。しかしペンとその蓋をとめるように小さな紙が貼ってある。よく見るとそれは……。「お札?」小さいながらも神社のお札のような模様がびっしりと書き込まれている...
ちいさな物語

#118 エビフライ・エクスプロージョン

その日は、朝からもう散々だった。目覚ましは鳴らないし、シャワーのお湯は出ないし、家を飛び出したら豪雨だし、あげく電車は遅延。やっとの思いで会社にたどり着いたら、ちょうどお昼休みが始まっていた。どうせ残業分がたまってたし、フレックスを利用した...
ちいさな物語

#111 致命的なタイプミス

「このキーボードは、打った言葉を現実にする」店主にそう言われて、俺は半信半疑でその黒いキーボードをながめる。古道具屋にキーボードというのがめずらしくて、俺はそれを手に取っていた。どこにでもある普通のキーボードと変わらない。ただ、モニターにつ...
ちいさな物語

#110 回る歯車

俺の仕事は単純だった。作業場に入る。機械の前に立つ。決められたタイミングでレバーを引く。それだけだ。俺が引くレバーに連動して、巨大な歯車がゆっくりと回り始める。最初は重たそうに軋むが、やがて安定し、規則正しいリズムを刻む。そして俺は決められ...
ちいさな物語

#101 チャラ神様のご加護

深夜、人気のない神社の境内。今年こそ、彼女ができますように。鳥居をくぐると、目の前にキラッキラのスーツを着た男がいた。「やっほ~☆ 君、悩みとかあんの?」「……は?」金髪オールバックにサングラス。胸元をはだけさせ、金のネックレスがジャラジャ...