SF・近未来

SF

#597 月の病

月面探査船が持ち帰ったのは、輝かしい成果だけではなかった。船長だった男が、最初に見せた異変は、長時間「月を見ている」――それだけのことだった。しかし彼の体内では小さな存在が蠢き、不可逆な変化をもたらしていた。それが、地球全体を静かな絶望へと...
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#584 銀河の果ての拾い物

銀嶺114年 4月6日宇宙船の旅は、地上で暮らす人々が夢見るような煌びやかな冒険ではない。少なくとも、貨物運搬船『龍宮号』の操縦席に座っている僕にとってはそうだ。窓の外に広がるのは、どこまでも続く漆黒の闇と、針で突いたような光の粒。初めて宇...
ちいさな物語

#567 会議室の完璧な存在

その機械が一般企業の会議室に普及して以来、ビジネスマンの仕事への姿勢は頭上のホログラムによって丸わかりになってしまった。SG(スリープ・ゲージ)――脳波から睡眠欲求を読み取り、ゼロから100までの数値で可視化する装置。それは、個人の体調管理...
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#541 トースター・オーバースペック

僕はただ単純に、カリッとしたおいしいトーストが食べたかっただけなのだ。引っ越してから今まで忙しくて必要最低限の家電しかそろえていない。だからトースターを持っていなかったんだ。これまでパンは焼かずにそのまま口にしていた。そこでいよいよ細々とし...
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#539 この星は悪くない

あれは確か、夜風がやけに冷たく感じられる晩だった。仕事帰り、私は河川敷に腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げていた。特別な理由はない。ただ、星を見ていると、今日一日の出来事がすべて収まっていくような感じがして落ちつくからだ。そのときだった。空の...
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#536 地球引越し計画

地球を丸ごと引越す、と博士が言い出した。朝のニュース番組で突然その一言が流れた瞬間、コメンテーターは誰も口を開かなかった。台本になかったんだろう。しんと静まり返っている。司会者がなんとか場をつなごうとして拍手した。「すごいですねっ!」発言し...
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#490 冬の花火と宇宙人八割時代

地球がかなり宇宙勢力に負け始めていると気づいたのは、確か三年前の冬頃だったと思う。ニュースで「すでに世界人口の八割が宇宙人でした」と発表されたのがきっかけだ。アナウンサーが笑顔で言っていた。まるで「明日は晴れるでしょう」と同じテンションで。...
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#486 転校生の秘密

あの日、教室のドアが開いた瞬間、空気が変わった。転校生の悠木さん。その瞬間、ざわめきすら止まったのを覚えている。誰もが彼女を見た。息をのむような美しさというやつだ。黒くてまっすぐな髪。光を吸い込むような瞳。ただの高校生とは思えない、異様な静...
ちいさな物語

#484 ロボット掃除機、逃走中

うちのロボット掃除機が逃げた。本当に、逃げた。電源も入れてないのに、玄関のドアの隙間からスッと出ていったのだ。夜中の二時。寝ぼけた俺の目には、あの丸いフォルムがまるで忍者のように見えた。「おい! お前、どこに行く!」叫んだが、返事はない。代...
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#471 宇宙海賊の長い一日

楽して稼ぐのが信条の宇宙海賊。無人の貨物船のはずが、おしゃべりAI相棒と、とんだ厄日に巻き込まれていく。