くすっと笑える

イヤな話

#631 強制的に加害者

オフィスの休憩室で、私と同僚の佐藤さん、後輩の鈴木くんが弁当を食べていた。そこに、派遣社員の三諸さんが「ちょっと聞いてください」とお弁当を持って加わってきた。彼女の顔を見た瞬間、私たちの箸がいっせいに止まった。三諸さんの左の頬に、ファンデー...
SF

#630 ハーブの種からヤバいものが生えてきた件

いやね、ちょっと聞いてほしいんですけど、そもそも僕みたいなインドア派の人間がホームセンターの園芸コーナーに足を運んだこと自体、「丁寧な暮らし」という概念に脳内OSがカーネルパニックを起こしてしまったというか、思考アルゴリズムが暴走してしまっ...
ちいさな物語

#617 暗闇のポップコーン・サスペンス

私は今、人生最大にして最高にくだらない危機に直面している。場所は薄暗い映画館のシアター4、中央やや後方の良席である。この映画館はかなり古いが、ゆっくりと鑑賞できる穴場なのだ。確かに設備は古いし、「お化けが出る」なんてくだらないことをいう連中...
ちいさな物語

#615 三分間の特異点

カチ、と無機質な音が響き、電気ケトルのレバーが跳ねあがった。部屋を支配していた狂おしいほどの沸騰音がゆるやかに止み、深夜二時の冷え切った空気が再び私のワンルームを包み込む。私は熟練の外科医のような手つきで、カップ麺のプラスチックフィルムを剥...
ちいさな物語

#613 友だちの家の猫

友だちの慎也が猫を飼っているというので、猫好きの私は見せてもらいに行った。でもそのリンリンと呼ばれている猫はどこからどう見ても猫の着ぐるみを着たおっさんだった。「ずいぶんと……でかい猫だね」とコメントした後が続かない。しゃべったりはしないが...
ちいさな物語

#607 幼馴染が俺を好きらしいがそんなわけがない

「好き」高校二年の秋。放課後の教室で、幼馴染の七瀬が突然そう言った。反射的に後ろを見た。誰もいない。いや待て。こういう時って大抵、どこかに友だちが隠れているんだよ。スマホで撮影していて、俺が調子に乗った途端に「うぇーい!」って出てくるてはず...
ちいさな物語

#599 ドッペルゲンガーの正体

深夜二時のコインランドリーは、世界から切り離されたカプセルのようだった。いつもならこんな夜中にコインランドリーなんて来ない。思いがけない残業のあげく、最近洗濯をさぼっていたせいで明日着ていくシャツがなくなったのだ。眠気と戦いながら、回転する...
ちいさな物語

#596 退屈な休暇の終わらせ方

ねえ、ちょっと聞いてくれますか?これ、誰かに話したくてたまらなかったんですよ。信じられないかもしれないけれど、つい先週、本当にあった話なんです。舞台は、あの悪名高い「少女連続失踪事件」を解決した直後のこと。僕の相棒であるあの探偵――名前は伏...
ちいさな物語

#594 守護の手つきが荒すぎる

霊が見えるという知り合いの真田、ある日いきなり顔をしかめられた。「うわぁ」第一声がそれは失礼だろうと思ったが、真田は俺の肩のあたりを見たまま、動画視聴中に超絶長い広告が入ったような顔をして見ている。「ずいぶんと強い守護霊が……ついてますね」...
ちいさな物語

#593 間違い電話

Aという男は、顔はふつう、成績もふつう、運動もそこそこ――なのにとある事象だけが異常だった。それは、モテるとか、営業がうまいとか、そういうポジティブな異常ではない。間違い電話が、意味わからん頻度でかかってくるのである。今どき? 今どき間違い...