考えさせられる

ちいさな物語

#610 黄金の鱗の竜

なあ、お前、あの山がどうして呪いの山になったのか知っているかい?今はただの荒れ果てた山だが、昔はあそこに見事な黄金の鱗を持つ竜が住んでいたんだよ。山もとても豊かでね。その頃はこの村もとても豊かな村だった。秋はたくさんの実りがあり、井戸の水も...
SF

#597 月の病

月面探査船が持ち帰ったのは、輝かしい成果だけではなかった。船長だった男が、最初に見せた異変は、長時間「月を見ている」――それだけのことだった。しかし彼の体内では小さな存在が蠢き、不可逆な変化をもたらしていた。それが、地球全体を静かな絶望へと...
ちいさな物語

#585 月額親友サービス

俺とマコトは親友だ。いや、正確には、親友のサブスクで来てくれたのがマコトだった。月額九千八百円。高いのか安いのか、最初のころはよくわからなかった。でも、「よぅ、調子はどうだ?」と肩を叩いてくれる人間がいるだけで、ほっとする。それに、連絡をく...
SF

#584 銀河の果ての拾い物

銀嶺114年 4月6日宇宙船の旅は、地上で暮らす人々が夢見るような煌びやかな冒険ではない。少なくとも、貨物運搬船『龍宮号』の操縦席に座っている僕にとってはそうだ。窓の外に広がるのは、どこまでも続く漆黒の闇と、針で突いたような光の粒。初めて宇...
ちいさな物語

#578 大「代行」時代

いやもう、マジで現代社会の効率化ってのはどこまで行っちゃうんですかね?皆さんもご存知でしょう、数年前に流行った退職代行。そのとき僕はまだ笑っていました。いやまあ、気まずいもんな、とは思ったわけです。上司に「辞めます」と言うの、胃がきゅっとし...
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#568 失せ物国境検問所

なくしたボタンに届いた一通の通知。〈あなたの持ち物は、失せ物の国の入国審査を待っています〉——。
ちいさな物語

#563 夢の途中で

最初に気づいたのは、たぶん2月の終わり頃だったと思う。その日の夢はやけに鮮明だった。それ自体はたまにあることなんだけど、このときはもっとおかしな夢だった。「遅刻だ!」って大慌てで駅の階段を駆け上がっていく。でも改札前で定期が見つからない。泣...
ちいさな物語

#551 告白は戦争だと思っている

まず最初に言っておく。告白はイベントではない。儀式でもないし、雰囲気作りでもない。ましてや「気持ちを伝えるだけ」なんていう、ふわっとした概念では絶対にない。告白とは、準備九割九分、実行一分の情報戦であり、心理戦であり、環境構築ゲーである。俺...
ちいさな物語

#550 知育菓子への耐性

最初に違和感を覚えたのは、知育菓子なのに硬すぎたことだった。説明書には「やさしく噛みましょう」と書いてあるのに、歯が折れそうなほど硬い素材だ。それでも俺は説明書通り、真剣に菓子を作成した。完成したそれは、どう見ても食べ物ではなく、さるぐつわ...
ちいさな物語

#545 電子の魔女

魔女なんて、科学技術が発展したこの現代にいるわけないだろ。仕事帰りに立ち寄ったカフェで、俺がそう言うと、彼女はスマホを触りながら小さく笑った。「魔女だって現代は電子機器を使いこなすわ」彼女は顔も上げず、スマートフォンの画面を指でなぞりながら...