考えさせられる

ちいさな物語

#552 吠えられる理由

隣の家の犬は、俺を見ると必ず吠える。朝でも、夜でも、距離があっても関係ない。門の前を通るだけで、低く、しかし確信に満ちた声で吠える。他の人にはそうでもない。子どもには尻尾を振り、配達員には警戒の目を向けつつ黙っている。俺にだけ明確な敵意を向...
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#551 告白は戦争だと思っている

まず最初に言っておく。告白はイベントではない。儀式でもないし、雰囲気作りでもない。ましてや「気持ちを伝えるだけ」なんていう、ふわっとした概念では絶対にない。告白とは、準備九割九分、実行一分の情報戦であり、心理戦であり、環境構築ゲーである。俺...
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#550 知育菓子への耐性

最初に違和感を覚えたのは、知育菓子なのに硬すぎたことだった。説明書には「やさしく噛みましょう」と書いてあるのに、歯が折れそうなほど硬い素材だ。それでも俺は説明書通り、真剣に菓子を作成した。完成したそれは、どう見ても食べ物ではなく、さるぐつわ...
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#545 電子の魔女

魔女なんて、科学技術が発展したこの現代にいるわけないだろ。仕事帰りに立ち寄ったカフェで、俺がそう言うと、彼女はスマホを触りながら小さく笑った。「魔女だって現代は電子機器を使いこなすわ」彼女は顔も上げず、スマートフォンの画面を指でなぞりながら...
SF

#541 トースター・オーバースペック

僕はただ単純に、カリッとしたおいしいトーストが食べたかっただけなのだ。引っ越してから今まで忙しくて必要最低限の家電しかそろえていない。だからトースターを持っていなかったんだ。これまでパンは焼かずにそのまま口にしていた。そこでいよいよ細々とし...
SF

#539 この星は悪くない

あれは確か、夜風がやけに冷たく感じられる晩だった。仕事帰り、私は河川敷に腰を下ろし、ぼんやりと空を見上げていた。特別な理由はない。ただ、星を見ていると、今日一日の出来事がすべて収まっていくような感じがして落ちつくからだ。そのときだった。空の...
SF

#536 地球引越し計画

地球を丸ごと引越す、と博士が言い出した。朝のニュース番組で突然その一言が流れた瞬間、コメンテーターは誰も口を開かなかった。台本になかったんだろう。しんと静まり返っている。司会者がなんとか場をつなごうとして拍手した。「すごいですねっ!」発言し...
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#496 灰の夜

あれは、北の街道を歩いていたときのことだった。霧が濃く、馬の蹄の音が霞の中に吸い込まれていくような夜だった。宿を探しているうちに道を外れ、気づけば森の中にいた。ふと視界の奥に明かりが見えた。揺らめく何かの光。あんなところに何かあっただろうか...
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#492 森の熊田さん

ニュースキャスターが真顔で言った。「本日、午後二時ごろ、紳士風の熊が市内を歩いているとの情報が入りました」紳士風の熊。その言葉だけで違和感が爆発する。画面には熊。スーツにネクタイ。手にはブリーフケース。記者が近づく。「お仕事中ですか?」熊は...
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#490 冬の花火と宇宙人八割時代

地球がかなり宇宙勢力に負け始めていると気づいたのは、確か三年前の冬頃だったと思う。ニュースで「すでに世界人口の八割が宇宙人でした」と発表されたのがきっかけだ。アナウンサーが笑顔で言っていた。まるで「明日は晴れるでしょう」と同じテンションで。...