ほっこり

ちいさな物語

#606 部屋にいる人

四歳の息子が描く家族の絵に、見知らぬ人物が一人、また一人と増えていく。「まだ描きたい人がいるの」——。
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#603 扉職人の理

なあ、あんた。そこにある古びた木の扉を見てくれよ。ただの板切れに見えるかもしれないが、こいつが完成したときには、ここから一歩踏み出すだけで遥か遠くの異国へ行けるようになるんだ。俺はこれを作る扉職人の弟子だ。師匠は、この道では知らない者がいな...
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#601 多すぎた祝福

王子の誕生に、二千もの妖精が祝福を授けた。完璧に生まれついた王子に、ただひとつだけ、足りないものがあった。
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#595 夜をつかまえた

なあ、信じてくれるか分からないけど、俺、「夜」を飼ってたことがあるんだ。いや、比喩じゃなくて文字通りの意味でさ。あの日、まだ空が白み始めたばかりの午前五時くらいだったかな。散歩に出ようとしたら、マンションの植え込みの下に、なんだか黒くてキラ...
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#592 五人の僧侶

昔々、あるところに、ひとりの旅人がおったんじゃよ。その旅人はな、自分の蓄えさえ乏しいのに、困っている人を見ると放っておけない。それはそれは心のやさしい男だったんじゃ。ある時、男は険しい山道を越えて、遠くの町へと向かっておった。山の中は風が冷...
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#588 サービスタイム

うちの近所のスーパーは、夕方六時を過ぎると空気が変わる。惣菜コーナー周辺を中心に客の様子が不自然になるのだ。誰もが興味なさそうな顔をしながら、何度も同じ場所をうろうろし始める。全員、似たような軌道を描きながら、回遊魚のごとく店内を回り始める...
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#576 雨を飼う

そのペットショップは、路地裏に隠れるように存在していた。看板には「気象標本・動植物取扱店」と掠れた文字で書かれている。気象標本とはなんだろう……私は興味本位で店内に足を踏み入れた。気象標本の例として店主の老婆から手渡されたのは、青白く光る小...
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#573 忘れられた場所

王都へ向かうため、私は日暮れの乗合馬車に乗った。地図師ギルドの見習いになったばかりで、胸の中はやる気よりも、失敗して笑われた記憶のほうでいっぱいだ。馬車は古く、扉には消えかけた紋章があり、御者は深く頭巾をかぶって顔を見せない。青いランタンが...
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#567 会議室の完璧な存在

その機械が一般企業の会議室に普及して以来、ビジネスマンの仕事への姿勢は頭上のホログラムによって丸わかりになってしまった。SG(スリープ・ゲージ)――脳波から睡眠欲求を読み取り、ゼロから100までの数値で可視化する装置。それは、個人の体調管理...
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#566 叶えるお守り

駅から坂を十分ほど上ると、杉木立に囲まれた小さな神社が現れた。鳥居の横の掲示板には、地元の祭りの案内と「清らかな心」という墨書が貼られている。いかにも地域に密着した小さな神社という感じだ。僕の聞いた噂は本当なのだろうか。鳥居をくぐって進むと...