どんでん返し

ちいさな物語

#632 命の恩人

山の夜は、すべてを飲み込むほどに深い黒一色だった。そんな中、私は完全に山の中で道を見失っていた。スマホの画面は暗いままで使い物にならない。懐中電灯の頼りない光だけが、霧の立ち込める不気味な木々を照らしていた。雨が激しさを増し、冷たい水滴が容...
ちいさな物語

#620 Bluetooth

あ、次は私の番ですね。霊感とかがないので幽霊の話とかじゃないんですが……私が数年前に体験した話をさせてください。当時、私は大学を卒業したばかりで、古いマンションで一人暮らしを始めたところでした。格安物件でしたが、初めての一人暮らしということ...
ちいさな物語

#619 水底からの声

有馬はここ数週間、毎晩のように同じ夢にうなされていた。あたりは深く冷たい霧に包まれており、まるで水の中にいるかのような息苦しさがある。その霧の向こうに、一人の若い男がいた。男は有馬の目を真っ直ぐに見つめ、顔を真っ赤にして何かを必死に叫んでい...
ちいさな物語

#611 パチンコ店の怪

今から十年ほど前の話だ。俺は郊外のパチンコ店でバイトをしていたんだ。あんた、知ってるかな。国道の脇の「ゴールデンラッキー」って店だ。まだあるかわからないけどな。当時はまだ現在とは違い、玉が筐体から外に出る仕様だった。だからパチンコ屋のバイト...
ちいさな物語

#605 勤務先の異世界支社に飛ばされたけど質問ある?

あ、どうも。聞こえてます? こっちからだと通信、不安定なんですよね、基本。ええ、そうです。まさに僕が、例のスレを立てた本人ですよ。「勤務先の異世界支店に飛ばされたけど質問ある?」ってやつ。まさかあんなに伸びるとは思いませんでしたけど、まあ、...
SF

#584 銀河の果ての拾い物

銀嶺114年 4月6日宇宙船の旅は、地上で暮らす人々が夢見るような煌びやかな冒険ではない。少なくとも、貨物運搬船『龍宮号』の操縦席に座っている僕にとってはそうだ。窓の外に広がるのは、どこまでも続く漆黒の闇と、針で突いたような光の粒。初めて宇...
ちいさな物語

#474 トンネルの中

その子に出会ったのは、本当に偶然だった。あの日、僕は出張帰りで、地方のローカル線の無人駅に降りた。帰りのバスまで時間があって、少し散歩でもしようと駅前の坂道を登っていたときだ。人通りなんてまったくない。途中の古びた案内板には、「隣町へ通じる...
ちいさな物語

#454 超能力探偵の秘密

僕は名探偵の助手をしている。名前は伏せるけど、うちの探偵は業界でもそこそこ名が知られていて、依頼が絶えない。新聞やテレビにも取り上げられるくらいだから、まあ世間的には「名探偵様」ってことになってる。確かに頭はいい。知識量も豊富だし、観察眼も...
ちいさな物語

#411 レシート除霊師

「また拾ってる……」最初に見かけたのは、駅前のコンビニの前だった。スーツ姿の男が地面に落ちたレシートを、ひとつひとつ丁寧に拾い集めていたんだ。俺は最初、ただの奇行にしか思えなかった。もしくは何かしらの信念でゴミ拾いをしたい人なのか、くらいで...
ちいさな物語

#349 恋愛マスターの真実

「恋愛ってのはさ、駆け引きがすべてなんだよ」また始まった。友人同士で恋愛話に花を咲かせていると、必ずどこからともなく割り込んでくる男、篠原。自称・恋愛マスターの彼は、毎度のごとく偉そうな口調で恋愛を語り出すのだが、友人の誰もまともに耳を傾け...