#605 勤務先の異世界支社に飛ばされたけど質問ある?

ちいさな物語

あ、どうも。聞こえてます? こっちからだと通信、不安定なんですよね、基本。ええ、そうです。まさに僕が、例のスレを立てた本人ですよ。

「勤務先の異世界支店に飛ばされたけど質問ある?」ってやつ。まさかあんなに伸びるとは思いませんでしたけど、まあ、みんな好きですよね、異世界。

本当なのかって? スレ上では「釣りですよ」みたいなこと書いちゃったけど、実は本当なんです。

でもね、先に言っておきますけど、例のスレで書いた通り、キラキラした冒険譚なんて一つもありませんからね?

こっちじゃ僕、ただの「在庫管理・魔素調整担当」っていう、日本にいたときよりよっぽど地味な仕事をさせられてるんですから。

まずね、あのスレで一番多かった質問の「本当にモンスターいるの?」って話から。先に答え言っちゃいますけど、いますよ、普通に。会社の裏山にゴブリンがよく出ます。

でも、あいつら全然モンスターって感じじゃないですよ。ただの「話が通じない、ちょっと足の速い害獣」です。農作物を荒らすイノシシみたいなもんですね。

それを追い払うのも僕の仕事なんです。支給された棒で、叩いて追い払うんです。これ、労働基準法とかどうなってるんですかね。異世界だから法律が適用されないとか、そういうことなんでしょうか

「魔法は使えるの?」っていう質問もありましたね。ええ、使えますよ。でも、皆さんが思うような「ファイアボール!」みたいなのは習得するにも国家資格が必要です。ほら、警察官が銃を持てるみたいなイメージだとわかりやすいかな。危険ですからね。攻撃魔法。

僕ら一般人が使えるのは、虫除けの魔法とか、お茶を常に適温に保つ魔法とか、そんな生活魔法ばっかりです。蚊取り線香とか、電気ポットみたいなものの代用ですね。

だから魔法使えたって、実生活そんな変わりないですよ。ハリー・ポッターみたいな派手な世界じゃないですからね。一般人にとっては。

ただ、魔力の消費が激しい日は、帰宅後に頭痛がすごいですね。これはちょっとマイナス要素かな。

会社側はね、異世界を「未開のブルーオーシャン」なんて呼んでますけど、実態はただのブラック業務ですよ。転移装置の維持費が高いからって、僕らの給料あげてくれませんし。こんな危ない場所で働いてるのに、危険手当とかないんですから。

「魔王はいるの?」って質問もあったな。端的に言うと魔王はいるよ。でも、ほら、そっちでいうところの戦争みたいなものかな。戦争やってる国はあるけど、自分には影響ないなってニュース見ながら他人事でしょ?

魔王もおんなじ。魔王がいてひどい目に遭っている人たちがいるっぽいけど、この辺は全然だなって。魔王を倒せって騒いでいる人たちもいるし、魔王討伐だって冒険の旅に出るパーティももちろんいるよ。

でも、まぁ、多くの人が自分の生活で手一杯って感じかな。

制服についても聞かれましたけど、これがまた最悪なんです。みなさんがイメージする異世界のモブそのものです。町の人Aの服装を想像してもらったらいいですよ。たぶんそのままですから。

郷に入っては郷に従えってね。うちの社長の方針らしいです。確かにスーツ姿じゃ、こっちで信頼を得るのは難しいでしょうしね。

正直、これ、完全に左遷だと思ってます。同期のやつらは本社で最新のAIとかいじってるのに、僕は異世界の僻地で薬草の梱包作業ですよ。

身バレしたくないんで、あまり事業の話はできないんですけど、異世界がブルーオーシャンって騒ぐってことはなんとなく想像できるんじゃないですかね。

まぁ、商社みたいなものだと思ってもらえれば、当たらずとも遠からずってところです。

たまに本社から「視察」に来る役員たちが、空気清浄魔法をバリアみたいに張って、汚いものを見るような目で僕らを見て帰るのが一番腹立ちますよ。

あ、そうだ。こっちの食事についても話しておかないと。食文化は地獄ですよ。

基本、主食は「光る苔」を練り込んだパンです。味はしません。ただただ、口の中が青白く光るだけ。

どんな事情があって苔を練り込むのか知りませんが、そっちから持ち込んだ食料なんてすぐ底をつきますからね。Amazonも届きませんし。苔パン食べるしかないですよ。果物とか野菜もありますけど、全般的に口には合いませんね。

転職ですか? 毎日考えてますよ。でもね、異世界支店勤務の経歴なんて、そっちのハローワークでどう説明すればいいんですか。

我が社の異世界支店は超機密事業なんですよ。今、べらべらしゃべってますし、掲示板にも書いちゃいましたけどね。楽しみがそれくらいしかないんですから、許してくださいよ。

じゃあ、また掲示板にスレッド立てるんで、暇だったらレスしてください。ではまた。

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