ちいさな物語 #089 あさりの味 海辺の町を訪れたのは、もう何度目だっただろうか。海岸沿い特有の潮風がまとわりつくような空気はやはり体に馴染んでいる。小さな食堂に入り、私は大好きだった“それ”を頼んだ。そう、あさりの味噌汁だ。箸でそっと貝殻を持ち上げる。殻の内側はつるりとし... 2025.03.01 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #084 生活実態調査の実態 ある日、俺のスマホに一通のアンケート結果が届いた。「全国100万人が答えた生活実態調査」なんとなく興味が湧き、結果を眺めてみる。すると、開いた瞬間、思わず「は?」と声を漏らした。——「朝食にワニの肉を食べる人、78%」嘘だろ? そんなものス... 2025.02.27 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #082 究極のピザ 「いや、だからパイナップルはピザに合わないんだって!」「お前の方こそ、アンチョビの塩辛さを理解してない!」僕とルームメイトのケンは、ピザのトッピングについて激しく口論していた。もともとは仲のいい大学の同級生だったのに、この問題に関してだけは... 2025.02.26 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #079 乙女ゲーム化した高校生活にモブの俺がツッコミ入れていきますね 「いやいや、ありえないだろ」俺は隣の席で繰り広げられる光景に、思わずツッコミを入れた。ここはごく普通の高校。そしてこの物語のヒロイン——橘ひまりは、決して”かわいい”タイプではない。見た目は普通、性格はどちらかというと生意気。気分屋の猫みた... 2025.02.24 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #078 行列の先にあるもの その日、俺は仕事帰りに駅前の広場を通った。いつもなら通り過ぎるだけの場所なのに、今日は何かがおかしかった。――行列だ。ものすごく長い行列ができている。最初は人気のスイーツでも売っているのかと思った。でも、列に並んでいる人たちはみんなスマホを... 2025.02.24 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #071 見たことがある 「もう逃げ場はないぞ!」暗闇にそびえる崖の上、刑事・田村は拳銃を構えて叫んだ。その先に立つのは、指名手配中の銀行強盗犯・柴田。汗だくの顔を歪ませ、肩で息をしながら後ずさる。しかし、もう後ろは崖。ここからの逃亡は不可能だ。「くっ……」柴田は崖... 2025.02.20 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #066 肉の正体 「この肉……どこ産なんだ?」ステーキナイフを持ちながら、俺はシェフに尋ねた。「珍しいですよ」シェフはにやりと笑う。「地球では、なかなか食べられませんから」地球?噛み締めた瞬間、ジューシーな肉汁が口の中に広がる。豊潤な香り、深みのある味わい。... 2025.02.18 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #065 ワカメカタストロフ ワカメって、こんなに増えるものだったか?俺は台所のシンクを見下ろし、唖然としていた。スーパーで買った乾燥ワカメをちょっと戻すつもりだったのに、気づけばシンクが緑の海になっている。水を吸ったワカメが、どんどん膨らみ、シンクからあふれ出し、床に... 2025.02.17 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #060 無職! 桃太郎、行きます!! 「桃太郎になってくれませんか?」知らない男に、いきなりそう頼まれたのは、俺が会社をクビになり、ヤケ酒をあおっていた夜のことだった。「は?」「いや、だから。鬼を退治してほしいんです。報酬は……1000万円でどうでしょう」1000万か……。悪く... 2025.02.15 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #059 チョコと手錠 いや、あのね、聞いてほしいんだけど——こんなの、普通ないでしょ!?バレンタインだったのよ。女子としては一世一代の大勝負の日なわけ。――で、その前に私、人生で初めて一目惚れしたの。駅でさ、偶然見かけたイケメン。長身で、黒髪がさらっとしてて、ス... 2025.02.14 ちいさな物語変な話