ちいさな物語 #215 額の刃 この町の人々は、めったに怒らない。満員電車で押されても、店員に無視されても、上司に理不尽なことを言われても、口元をひきつらせて、じっと堪える。なぜなら、「キレる」と、額が割れるのだ。バカな話のように聞こえるが、実際にそうなる。ひび割れた額の... 2025.05.03 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #211 名探偵の探しもの 探偵・御堂零士みどうれいじと初めて会ったのは、僕が働くカフェ「雨宿り」でのことだった。その日も静かな午後だった。雨が降り出したので、僕は表の看板を引っ込めようとしていた。そこに、濡れたトレンチコートを着た男がふらりと現れた。「温かい紅茶を」... 2025.05.01 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #210 究極の鼻ティッシュ選手権 ある朝、僕は唐突に鼻血を出した。それは突然で、理由もなく鼻の奥から温かい感触が流れ落ちてきたのだ。慌てて洗面所に駆け込み、急いでティッシュを取って鼻に詰め込む。鏡を見てみると、鼻から白いティッシュの塊が不格好に飛び出している。まったく美しく... 2025.05.01 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #209 殺人犯の声 その能力に気づいたのは、駅のホームだった。残暑の厳しい日差しの中、僕は自動販売機でコカ・コーラのペットボトルを買った。シュッと開けた蓋の音と共に、炭酸が弾ける音が心地よく耳に響いた。「……電車遅いな、また遅刻しちゃうよ」誰かが呟く声が聞こえ... 2025.04.30 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #202 出勤交代制度 令和☓☓年の春、日本政府は「出勤交代制度しゅっきんこうたいせいど」を発表した。通称「現代版・参勤交代」。要約すると、サラリーマンは一年のうち二ヶ月を東京で公務員として働き、残りを会社の地方支社や関係自治体に「詣でる」ように勤務せねばならない... 2025.04.27 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #195 アメリカンドッグの謎 図書館の返却棚に並べられていた古い推理小説。なんとなく手に取ったその本のページをめくった瞬間、何かの紙片が落ちた。拾ってみると、文字が薄くなったレシートだ。日付は1年前。近所のコンビニの名前と、以下の品名が印字されていた。・紙コップ・乾電池... 2025.04.23 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #194 片付かない部屋 「本当に、ごめんね。たぶん、ひとりじゃ無理だと思って」そう言って僕を呼んだのは、中学時代からの同級生・美沙だった。学生時代から散らかし魔だった彼女の部屋が、どうしようもなく荒れてきたという。興味本位で訪ねたワンルームは、予想以上の惨状だった... 2025.04.23 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #193 散歩の達人 僕の夢はシンプルだった。何か一つの道を極めること。今、目指しているのは散歩の達人。人間の散歩、犬の散歩、どんな散歩でも完璧にこなしたかった。ある日、究極の散歩道があると噂される森を訪れた。入り口には『あらゆる散歩者を歓迎する』という心躍る看... 2025.04.22 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #192 手袋、怒りの暴走 冬の公園のベンチに、ぽつんと落ちていた赤い手袋。それは右手だけのさみしい存在だった。「ご主人はきっとすぐに戻ってくる!」片手袋は前向きだった。だが、一日経ち、二日経ち、ついには一週間経っても、彼女の持ち主は姿を見せなかった。通りかかった老婦... 2025.04.22 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #189 コンビニ弁当マニアの俺がつぶやいていくぜ? ちょっと語らせてくれ。俺、コンビニ弁当が人生の全てみたいなコンビニマニアなわけよ? 今日は特に俺の推し『ハピマ』『デイフレッシュ』『サンマート』の弁当の魅力を爆速で語ってくぞ。まず『ハピマ』な。ここはもう完全に弁当界のAppleよ。革新性が... 2025.04.20 ちいさな物語変な話