ちいさな物語 #124 右手の暴走 きっかけは、中古屋で買った一本の万年筆だった。アンティーク風で格好良く、気に入って即購入。しかしペンとその蓋をとめるように小さな紙が貼ってある。よく見るとそれは……。「お札?」小さいながらも神社のお札のような模様がびっしりと書き込まれている... 2025.03.19 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #118 エビフライ・エクスプロージョン その日は、朝からもう散々だった。目覚ましは鳴らないし、シャワーのお湯は出ないし、家を飛び出したら豪雨だし、あげく電車は遅延。やっとの思いで会社にたどり着いたら、ちょうどお昼休みが始まっていた。どうせ残業分がたまってたし、フレックスを利用した... 2025.03.16 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #111 致命的なタイプミス 「このキーボードは、打った言葉を現実にする」店主にそう言われて、俺は半信半疑でその黒いキーボードをながめる。古道具屋にキーボードというのがめずらしくて、俺はそれを手に取っていた。どこにでもある普通のキーボードと変わらない。ただ、モニターにつ... 2025.03.12 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #110 回る歯車 俺の仕事は単純だった。作業場に入る。機械の前に立つ。決められたタイミングでレバーを引く。それだけだ。俺が引くレバーに連動して、巨大な歯車がゆっくりと回り始める。最初は重たそうに軋むが、やがて安定し、規則正しいリズムを刻む。そして俺は決められ... 2025.03.12 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #101 チャラ神様のご加護 深夜、人気のない神社の境内。今年こそ、彼女ができますように。鳥居をくぐると、目の前にキラッキラのスーツを着た男がいた。「やっほ~☆ 君、悩みとかあんの?」「……は?」金髪オールバックにサングラス。胸元をはだけさせ、金のネックレスがジャラジャ... 2025.03.07 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #097 ポイント人生 目が覚めた瞬間、頭の中に奇妙な声が響いた。──「おめでとうございます。あなたは人生三周目に突入しました」何だ? 俺は、今、生まれたばかりなのか? 意識だけがはっきりしているが、身体は動かない。赤ん坊だからか? いや、違う。手を見れば、しっか... 2025.03.05 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #092 言い訳の数 「被告人、あなたは万引きの罪で起訴されていますね?」裁判官の問いに、被告の男は堂々と答えた。「いえ、あれは不可抗力でした。」「不可抗力?」「そうです。ちょうどその日、私のズボンのゴムが緩んでましてね。歩いていたらスルスルっと下がってきたんで... 2025.03.03 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #089 あさりの味 海辺の町を訪れたのは、もう何度目だっただろうか。海岸沿い特有の潮風がまとわりつくような空気はやはり体に馴染んでいる。小さな食堂に入り、私は大好きだった“それ”を頼んだ。そう、あさりの味噌汁だ。箸でそっと貝殻を持ち上げる。殻の内側はつるりとし... 2025.03.01 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #084 生活実態調査の実態 ある日、俺のスマホに一通のアンケート結果が届いた。「全国100万人が答えた生活実態調査」なんとなく興味が湧き、結果を眺めてみる。すると、開いた瞬間、思わず「は?」と声を漏らした。——「朝食にワニの肉を食べる人、78%」嘘だろ? そんなものス... 2025.02.27 ちいさな物語変な話
ちいさな物語 #082 究極のピザ 「いや、だからパイナップルはピザに合わないんだって!」「お前の方こそ、アンチョビの塩辛さを理解してない!」僕とルームメイトのケンは、ピザのトッピングについて激しく口論していた。もともとは仲のいい大学の同級生だったのに、この問題に関してだけは... 2025.02.26 ちいさな物語変な話