ちいさな物語 #331 隣の子供 新しく引っ越したアパートは、築年数こそ古いが部屋も綺麗で家賃も安かった。駅からも近く、周辺環境も申し分ない。「掘り出し物だな」そう思って喜んでいたのも束の間だった。引っ越して数日後、夜遅く仕事から帰り、ベッドに横たわった時のことだ。隣の部屋... 2025.07.17 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #328 怪談の食卓 その街の路地裏には、看板のない小さな食堂があるという。この食堂の主人は、『怪談ハンター』と呼ばれる奇妙な男だ。「お客さん、怖い話はお好きですか?」店主は、訪れた客にいつもそんなふうに問いかけるらしい。――ある蒸し暑い夏の日、私は偶然その食堂... 2025.07.15 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #323 共鳴の檻 それは、たまたま見つけた小さなオンラインサロンだった。「ここなら、あなたの本当の声が届く」そんな文句に惹かれ、俺はそのサロンに足を踏み入れた。最初は、心地よかった。誰もが俺の考えに賛同し、意見を交換するたびに「わかる」「その通りだ」「もっと... 2025.07.10 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #321 赤い目の女 それは突然、小さな村を襲った。ある日、最初の犠牲者が出た。農作業中だった老夫婦の夫が、突然苦しみだし、その日の夜には息を引き取ったのだ。死因はわからず、村でただ一人の医師である私も首をかしげるばかりだった。ただ、死の間際に彼の体には不気味な... 2025.07.09 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #319 夜の行商人 夜道を急いでいたら、「おひとついかが?」という声をかけられたんです。振り返ると、そこには異様な雰囲気の行商人が立っていました。月明かりの下で見るその姿は、年齢も性別もよく分からない。影のように痩せ細った体を黒いマントで覆い、顔には深くフード... 2025.07.08 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #318 書庫の奥に眠るもの その書庫は、図書館の地下深くにありました。一般公開されることはなく、特別な許可を得た研究者だけが入ることを許されている場所です。私はある研究のために、特別に入室を許可されていました。薄暗い部屋に並ぶ古い木製の棚は、黴のような匂いを漂わせ、時... 2025.07.07 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #316 刻印を破る夜 もし命と引き換えに望むものが手に入ると言われたら、あなたはどうしますか?その選択を迫られた、あの日のことを今でも覚えています。人生のどん底にいたときです。仕事を失い、借金は膨らみ、家族にも見放され、すべてが終わったような気がしていました。そ... 2025.07.05 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #310 日記の中の声 休日の午後、僕は人気のない公園を散歩していた。公園の隅にある古びたベンチに腰を下ろそうとしたその時、視界の端に赤い革表紙の日記が入ってきた。その日記には、飾りもタイトルもなく、ただ中央に黒い字で『開くな』と書かれている。「開くなって書かれる... 2025.07.02 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #306 フェイス・オフ ある晩、私が帰宅すると郵便受けに奇妙な小包が届いていた。差出人は見知らぬ名前。送り状には「人生を変えるチャンスをあなたに」とだけ書いてある。通販か、新手の詐欺だろうか。私は疑いつつも、中身が気になって仕方なく、小包を開けてみた。中には小さな... 2025.06.30 ちいさな物語怖い話
ちいさな物語 #301 夏祭りの後 夏祭りは毎年家族で行く恒例の行事だった。兄と私は浴衣を着て、母と三人で神社の境内に向かう。兄は射的が得意で、いつも私の分まで景品を取ってくれる優しい人だった。けれどその夜は、兄の様子が少し違っていた。神社の境内は大勢の人で賑わっていた。屋台... 2025.06.26 ちいさな物語怖い話