怖い話

ちいさな物語

#398 光の怪談

普通、怪談といえば暗い夜道とか、薄暗い廃墟とかを想像するだろ?でもな、俺が体験したのは逆だったんだ。「明るすぎる場所」ってのが、いちばん怖かったんだよ。あれは学生のころ。友人たちと夜の街をふらついていて、ひとりで帰ることになった。夜十時を過...
ちいさな物語

#390 ソロキャンプの怪

動画配信者のKは、最近急激に人気を伸ばしていた。彼のスタイルはソロキャンプの生配信。焚き火を起こし、料理を作り、視聴者のコメントに答えながら一日を過ごすというだけのシンプルなものだ。「はいどうも、今日は山奥の渓谷沿いでソロキャンでーす」カメ...
ちいさな物語

#389 親ガチャアプリ

「笑った。マジであるんだ、こういうの」僕はその夜、画面を見ながら思わず声を漏らした。スマホにインストールされたばかりのアプリ。その名も――〈親ガチャ〉。SNSで誰かが冗談半分に貼ったリンクを踏んだのが始まりだった。普通なら怪しい広告か詐欺サ...
ちいさな物語

#385 日記に書いた昨日

なんでこんな状態になっているかって? とりあえず話を聞いてよ。俺さ、昔から日記をつける習慣があったんだよ。――といっても、几帳面な性格とかそういうんじゃなくて、単純に数年後とかに見たらおもしろいし、備忘録になるかな、くらいの感覚なんだ。夜寝...
ちいさな物語

#381 消えた友達の話

これから話すのは、俺が小学校5年生のときに体験した、ちょっと不思議で気味の悪い話だ。別に作り話なんかじゃなくて、本当にあったこと――なんだけど、信じてもらえないだろうな。まあ、とりあえず聞いてよ。その日は、クラスのみんなが楽しみにしていた遠...
ちいさな物語

#375 四人目のわたし

夏休みの終わり、私たち小学生四人は、友達の家に集まってお泊まり会をしていた。部屋の床に敷かれたふかふかのクッション、コンビニで買ったお菓子、ポテトチップスの袋、ジュースのペットボトルが散らばる。夏休みだからこそ許される贅沢。いつもなら恋バナ...
ちいさな物語

#371 親切の記憶

すべては仕事帰りの夜だった。今日は妙に体が重かった。コンビニでビールでも買って帰ろうか――そう考えながら、駅から家までの道を歩く。湿った夜風が頬にまとわりつき、足取りは自然と遅くなっていた。そのとき、通りの向こうで何かが動いた。薄暗い街灯の...
ちいさな物語

#370 台所にいるもの

ちょっと……なんというか、地味な話なんだけど、それでもいいかな。あれは、去年の夏の終わりだったと思う。夜中に喉が渇いて、私は水を飲みに台所へ降りた。家の中は蒸し暑く、外の虫の声が障子越しに響いていた。台所の電気はつけなかった。月明かりが窓か...
ちいさな物語

#365 バグに気づくな

大学を出て、久しぶりに地元に戻ったのは夏祭りが近い頃だった。懐かしい町並みに、見慣れないカフェだけがひときわ目立っていた。ふと立ち寄ったその店で、俺は信じられない光景を目にした。カウンターでアイスコーヒーを注文しているのは、高校時代に交通事...
ちいさな物語

#361 お揃いですね

電車の中で、隣に座った女性が俺と同じスマホケースを使っていることに気づいた。(まあ、よくあるデザインだし、偶然か)そう思いながらスマホをいじっていると、その女性がチラリとこちらを見て微笑んだ。「お揃いですね」なんとなく気恥ずかしくなり、「そ...